日本語のあれこれ日記【68】
[2024/11/4]
本記事の対象とするかな表記版ヘのリンクは、本記事の末尾にあります。
次のかな表記化として、本サイトの「日本近現代文学の部屋」の記事を取り上げようと考えました。
高村光太郎の詩に関しての記事が3本、夏目漱石の書簡集に関しての記事が5本あります。
著作権については、漱石、光太郎の没年がそれぞれ1916年、1956年で、著作権の保護期間が50年から70年に変更になった2018年時点で50年を経過していますから、保護期間は50年で、すでに著作権は切れています。
最初の記事は、高村光太郎の「根付の国」という詩について書いたもので、これから取りかかりました。
漢字かな交じり表記の文章をかな表記に書き換えるのは、けっこう手数がかかります。
問題を感じながらも、一通りかな表記化をして、あらためて考えてみました。
問題というのは、「漢字かな交じりの原文をかな表記に書き換えた場合、著作権としては、引用として扱うことができるのか」と言うことです。
上に書いた様に、高村光太郎自身の著作は著作権の保護期間が過ぎています。しかし、詩集の編者などによる文章を引用しているところがいくつかあるのです。
編者は世代的にずっと若いので、その著作は著作権で保護されます。
著作権の解説を調べると、著作権の権利は、私が想像していたより、随分と厳しいということが、だんだんと分かってきました。たとえば、原文の字面(じづら)を換えて良いのは、たとえば学校教育の現場で、小学三年生に読ませる文章としては難しい漢字が使われているので、かな表記に換える、という場合などに限定されているようなのです。
私の記事は、学校教育の場ではありません。また、読んでもらう対象の人は小学一年生に限ることから、かな表記が必要である、ということにも該当しません。
ですから、著作権で認められる引用の範囲を超えていると考えざるをえません。
その場合、次のふたつの方法が考えられるでしょう。
(1) 引用部分は、要約した文言に換える。
(2) 引用部分は、著作権の問題により、引用部分を省略するという旨を書いて、かな表記化を省略する。
私が試みているねらいは、かな表記文を提示して、すでに書いた漢字かな交じりの表記とくらべて、わかりやすさ、読んで理解する時間がどのくらい違うか、を評価することにあります。
上記の(1), (2)のいずれも、すでに書いた漢字かな交じりの表記とはかなり違った内容になってしまいます。比較するための役にたちそうもありません。
このようなことから、高村光太郎に関する記事は、かな文字表記の例としてアップロード・公開することは断念することにしました。
「日本近現代文学の部屋」で、その次にある夏目漱石に関する5本の記事では、内容は書簡集に掲載された書簡の文章で、こちらは編者による文章は出てきません。
しかし、こちらには、新たな問題が出てきました。
(1) 漢字の読みを確定しなければならない
(2) 漱石の時代は旧かな遣いのため、書簡は、その性格からも、漱石が書いた旧かな遣いのままに収録されている。これをそのまま踏襲するか、新かな遣いに換えるか。
(1)についてですが、明治期の手紙の書き方について精通している方であればすぐに分かるかもしれませんが、私には難しいしごとです。
たとえば「被下度候」という表記がありますが、これは漢文的な書き方で、「下されたく そうろう」と読むようです。「被レ下度候」と、返り点をつける場面でしょう。
同様に、「不取敢」は、「とりあえず」で、想像はつきますが、確認しないと心配です。
また、(2)のかな遣いの問題ですが、上に書いた「下されたく そうろう」、「とりあえず」は、旧かな遣いでは「下されたく さうらふ」、「とりあへず」です。
ア行は、ハ行、ワ行の可能性があります。「会う」は「あふ」、「田植え」は「たうゑ」です。
原文が'かな表記'であれば問題ないのですが、漢字を'かな'に変換するときにはとまどいます。したがって調べることが必要で、時間がかかります。
固有名詞はさらに難しくなります。
漱石の書簡の中に、林原耕三という人名が出てきます。
林原は問題無いのですが、下の名は困ります。現代かな遣いでは"こうぞう"ですが、旧かな遣いではどうなのか。
"耕"は、漢和辞典を見ると、かな表記は"こう"で、旧かな遣いでは"かう"と書かれています。"三"の読みでは"ぞう"は、人名として認められていますが、漢和辞典では人名については、旧かな遣いでの表記は示されていません。
悩んだ末に、"内村鑑三"を広辞苑で見ると、"―ざう"という表記が見つかりました。これから判断すると、"三"を"ぞう"と読む場合、その旧かな遣いは"ざう"ということになるでしょう。
このほか、"か"も要注意で、"くゎ"かもしれません。たとえば、図書館は"としょくゎん"、面会は"めんくゎい"です。
ですから、一つ一つ辞書にあたることが必要で、とても厄介です。私は旧かな遣いになれていないので、どの言葉を辞書で確認すべきか迷います。というより、むしろ、確認漏れで、現代かな遣いのままにしてしまった、ということが少なからずありそうです。
こうして、悩み、戸惑いながらも、ひとまずは、かな表記版を作りました。元記事の漢字かな交じり表記の記事はこちらです。