日本語のあれこれ日記【57】

日本語と漢字―その3

[2024/8/25]


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さらに かな表記について

一つ前の記事で、漢字を使わない表記について、自分なりに検討してみました。

大まかなところでは、「とんでもなく無理」という印象は受けませんでした。

これは、実に"意外"でした。

そこで、もう少し、詳しく考えてみることにしました。


なお、漢字を使わない、というとき、ローマ字表記も有力な候補です。

ですが、ひとまずは かな表記 について考えてみたいと思います。

ここで私がローマ字表記に対して消極的なのは、前の記事に書いたように、端的に言えば "file"、"disk" を "fairu"、"dhisuku" とタイプするのがいやだからです。

"file"の"l"にたいして"r"を使い、さらに"u"が続くこと、"disk"の"sk"を"suku"と日本語訛りになるのが許せないからです。

"file"に対して"fai"までは許せます。"disk" に対して "dhi"までは許せます。"ru"、"suku"がいやなんです。

漢字なしでも良い可能性がある

漢字なしでも良いかもしれない、と、わずかの可能性を考えてみたいと思うのは、自分の身の回りがそうであるからです。

ラジオ放送はある意味で、漢字を使わず、仮名書きの原稿を読むのと同じ結果です。

ただし、実際はかな漢字交じりの原稿を読んでいると思います。漢字は言葉の句切りを明確にし、その結果、アナウンサーは間を置いたり、抑揚をつけて話します。だから、聞いてわかりやすいのです。

このことは、後で詳しく論じますが、かな書きにもこれを取り入れます。

演劇も同様に、せりふの言葉を音として聞くもので、直接的に漢字は入ってきません。

学校の朝礼で校長先生が話すときも、議員が演説会場で演説するときも、歌手が聴衆を前に歌うときも、法廷で裁判長が判決文を読むときも、レストランでウェイトレスに注文をするときも、漢字は直接的には入ってきません。


ここで、一つ大きな問題があることを提起しておきます。上のような場合に、音声で聞いたとき、それを漢字表記に置き直して理解しているという可能性はあるのです。

漢字表記に置き直さないにしても、漢字表記に基づくイメージを連想している可能性はあります。

その場合、漢字を廃止すると、「漢字表記に基づくイメージを連想」することができなくなります。

日本人が、言葉から漢字を介してイメージを持つのか、これは大きな問題です。

ここでは単なる問題提起にとどめておきます。


漢字による恩恵

漢字による恩恵の第一は、造語力です。これはすぐに思いつきます。

国会議事堂、東京都知事、関東地方、最高裁判所長官、国際連合など、漢字抜きには考えられません。

ですが、最近は傾向が違います。

オリンピック、コンピューター、インターネット、AIなど、漢字を使わない新語が増えています。もしかして、漢字を使った新語より、漢字を使わない新語の方が多いのかもしれない、とさえ思ってしまいます。

洋画の題名も、「幌馬車」、「十戒」、「エデンの東」などという翻訳した題名のものから、「ゴッドファーザー」、「スタンド・バイ・ミー」、「マトリックス」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」など、翻訳しないケースも増えています。

ちなみに、原題をそのままカタカナ表記するというのは「Sound of Music」に始まるもので、これを直訳すると「音楽の楽音」となって訳(わけ)が分からないから、現題をカタカナ表記で「サウンド・オブ・ミュージック」にした、という説を、以前に聞いたことがあります

2023年新語

辞書の三省堂が選ぶ「今年の新語 2023」というサイトがあります。

ここに、2023年度の新語トップ10が掲載されているので、見てみます。

順位 言葉 意味
大賞 地球沸騰化 地球温暖化がさらに進み、一段と深刻化したことを強調する言葉
2位 ハルシネーション 人工知能(AI)が、事実とは異なる情報を出力こと。もともと、ハルシネーション(hallucination)は幻覚を意味するが、AIが正しくない内容を出力することを、AIが幻覚を見ている、と比喩的に表現する言葉。
3位 かわちい かわいいと同義。特に強調したいときに使う。
4位 性加害・性被害 性暴力など、性的な害を与える・受けること
5位 ○○ウォッシュ 世間に知られたくないことを隠すために、自らの善行を吹聴し、言い立てること。
6位 アクスタ アクリル・スタンドの略。アクリル製の板に、好きなキャラクターや人物写真などを印刷して立てておけるようにしたもの。
7位 トーンポリシング ある人の主張の中身ではなく、その口調や態度などを問題として指摘し、話を本題からそらすこと。 話し方のトーン(Tone)を取り締まる(Policing)という意味から、「話し方警察」等とも訳される。トンポリと短縮することもある。
8位 リポスト ほかの人の投稿内容を、自分のアカウント上に掲載すること。
9位 人道回廊 武力紛争の際、民間人の避難や人道支援物資の輸送などのために一時的に設ける通路。当事者はその範囲内では武力行使を停止し、通行の安全が保証される。
10位 闇バイト アルバイトとして募集した者を脅してやめられなくしたうえで、特殊詐欺や強盗などの犯罪を犯すことを強要すること。

上表で、言葉はトップ10のリストから持ってきました。意味欄は、様々な情報を参考に、自分にとってわかりやすい表現、と言う観点で作りました。

10件のうち4件が漢字を含む言葉、5件は英語から採られたカタカナの言葉、1件がひらがなで書かれる言葉です。

漢字を必要とする言葉は半分以下です。

人道回廊というのは、“humanitarian corridor”の訳です。humanitarian”は人道主義に関わる、とか人道的ということを意味します。回廊という言葉はあまり使われる言葉ではありませんが、建築では、離れた部屋同士、建物同士をつなぐ廊下で、通常は何度か折れ曲がっていて、途中に複数の部屋が接続している、というイメージです。

"人道回廊"を漢字の造語力を介さずに別の日本語の言葉にするのは難しそうです。

"闇バイト"は、"闇"が訓読みですから、漢字の造語力に依存したものではありません。"やみバイト"とか"ヤミ-バイト"としてもいいような気がします。ただし、"闇"と書くことで犯罪につながるような印象が出てきます。

一方、"やみバイト"とか"ヤミ-バイト"と書けば、"やみ"+"バイト"という語構成が認識でき、"やみ"からは"闇"、"病み"という負のイメージが浮かび上がります。

"闇"と"病み"の区別は直接的はできませんから、言葉を変える必要が出てきます。たとえば"ヤミのバイト"とすれば、"病み"よりは"闇"が導かれるでしょう。"病み"なら"病人の"などと言い換える必要が出てきます。


現在まで、日本語は漢字による造語力にたいへん助けられて、多くの言葉が作られてきました。

現在の言葉は、中国由来であれ、日本人が作った日本由来のものであれ、いきなり捨て去ることには無理があります。そこで、現在の語彙は基本的にに受け継ぐものと考えたいと思います。

そうなると、同音異議語をそのまま受け入れるわけで、何らかの対策が必要になるでしょう。

たとえば、化学と科学は似た側面を持つ言葉で、混乱を招くことがあります。そのため、特に混乱を避ける必要があるときには、現在でも「ばけがく(化学)のかがく」、「サイエンスのかがく」などと言ったりします。

このような言葉の気配りが必要になるでしょう。

言い訳ですが

ここまで、気持ちが先走って書いているということは認識しています。

ちょっと言い訳がましいことを言わせていただきたいのですが、この「日本語と漢字」のシリーズの記事は、自分の中で内部検討をすっ飛ばして、思いついたことを書き並べています。これには次の理由があります。

個人的に、私の生きてきた中で、きわめて少ない成功体験を考えてみると、他人の意見(助言を含む)や世の中の動向を無視して、自分の興味の赴くままに何かを進めたとき、一番良い結果が得られた、ということを実感しています。「一番良い結果」とはあくまで自己評価です。

たぶん、同じことに興味を持つ人がいれば、その人と議論することで認識が深まり、より進んだ判断ができるかと思うのですが、このような問題について興味を持つ人が周りにいません。

そこで、今回は、私が思いつくままの内容を書き並べることにしました。

その結果、意味の分からない論理の飛躍とか、前後の矛盾だとか、そういうものがいろいろと出ていると思います。

この記事は、「自分の考えを整理して、まとまった文章をつくる」ということを当面は目指しません。

どうか、お許しを願います、



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