日本語のあれこれ日記【12】

原始日本語の手がかりを探る[3]―ラ行音の侵食作用

[2017/7/9]


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ラ行の音は語頭にはほとんど使われないが語中・語末では頻出する

前回の記事で、動詞の活用語尾がラ行になるものが多い、と書きました。

多くの活用形で、連体形、已然形に"突然"の様にラ行が現れてくるのはとても奇異に感じると。

ナ行変格、上一段、上二段、下一段、下二段、カ行変格、サ行変格の各活用形では連体形、已然形で突然ラ行の音が入ってきます。

こう考えてくると、やはりラ行というものは特別なものだ、という印象が深まります。

現代語では

カ行変格、サ行変格の動詞の活用は、古語では基本的には「こ・き・く・くる・くれ・こ」、「さしせ・し・す・する・すれ・せよ」です。これが現代語では終止形が「くる」、「する」に変化します。

連体形・已然形に"る"、"れ"が侵食して、現代語ではさらに終止形でもラ行音の"る"が侵食した、という可能性はどうでしょうか。

ラ行音が徐々に活用部分に侵食していく、という考え方です。

この変化を昔にさかのぼっていくと、カ行変格、サ行変格の動詞の活用は「こ・き・く・く・く・こ」、「せ・し・す・す・す・せよ」というのが考えられます。

単なる想像です。仮説に至らないレベルです。

終止、連体、已然が同じ活用をしていた、これは不便だ、ということで、ラ行音がついた、という経過ですかね。

現代語では未然、連用がラ行音に侵食されていないのですが、いずれ侵食されるとすると、未来の日本語ではカ行変格、サ行変格の動詞の活用は「こら・きり・くる・くる・くれ・こ」、「さらしらせら・しり・する・する・すれ・せよ」でしょうか(これまた、極端な想像ですが)。

彼は来(こ)らない/来(き)ります/来る/来る時/来れば/こい、とか、彼はすらない/すります/する/する時/すれば/せよ、なんてことになるのでしょうか。

来(く) 原始日本語
古語 くる くれ
現代語 くる くる くれ こい
未来語 こら くり くる くる くれ こい
する 原始日本語 せよ
する 古語 する すれ せよ
する 現代語 さしせ する する すれ しろ
する 未来語 さらしりせれ しり する する すれ しろ

備考

改訂 新潮国語辞典―現代語・古語―の付録中の国文法概要・口語活用表で、四、助動詞の項に次のような記載がありました。

「る」「らる」「す」「さす」「しむ」について、これらは上の動詞の意味の能動・受身・使役・自発態を示していて、言語主体の判断を示すう右表の助動詞とは根本的に性質を異にする。したがってこれを接尾語と認めようとする見方がある。しかし、動詞に直接に付くという点で他の助動詞と同趣とする一般の取り扱いに従って助動詞とした。



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