考えてみると=まじめ編=原発=
[次に進む] [ひとつ前に戻る] [考えてみると=まじめの巻=のトップに進む] [ホームに戻る]
【5】限界試験について (2012/6/14)
前回の【4】で限界試験について書きました(2012/6/6)。
安全だと言うが、どこまで行ったらどのような危険な状態になるのか、を、安全な範囲だけでなく、危険になる範囲まで広げて考えるべきである。
東電は、福島第一原発で、この限界試験に関する検討をしていた
東電は、福島第一原発で、この限界試験に関する検討をしていたことが、最近になって発表されました。
(なお、津波の場合、実際に津波を起こして原発設備を試験する、ということはできないので、机上検討になるのはやむをえません)
以下は、2012/6/13(水)の朝日新聞朝刊(13版)を引用しての個人的な要約です。
【要約による引用開始】
2006年に、東京電力が、当時の最大津波想定値の5.7mを超える津波に襲われた時にどうなるか、そしてその対策費用はどのくらいになるか、について検討していたことを示す書類が見つかった。
原子力技術・品質安全部設備設計グループ(当時)で、05年12月から06年3月の間に行われた社内研修の一環で作られた。
資料によると、東電が福島第一原発で想定していた最大5.7mを超える津波に襲われた場合に、どのような機器や設備が壊れるかを高さごとに検討し、対策と費用を試算した。
13.5mの津波の場合、非常用発電機や直流充電器が浸水。昨年の事故と同じ全交流電源喪失になり、浸水を防ぐには5号機1基で20億円かかると試算。
20mの津波から施設を守るには、5,6号機の周囲の防潮堤だけで80億円かかるとした。
東電によると、成果は研修の報告会で発表された。報告会には通例、原子力部門の部長級が出席するといい、幹部が内容を把握していた可能性が高い。
【要約による引用終了】
「どのような機器や設備が壊れるかを高さごとに検討し」
とあります。
つまり、高さ何メートルの津波に襲われたらどうなる、高さ何メートルだったらどうなる、という検討をしていたのです。
そして、13.5mでは全交流電源喪失になる、という結論です。
私が、前回の【4】で限界試験について書いたことは、まさにこのことです。
ただし、「研修の報告会」で発表された、という点が気になります。
研修の目的は何だったのだでしょうか。
たとえば、新人の研究・結果発表に関する能力を高める、ということが研修の目的だったらどうでしょうか。
聴取者、そしてコメントすべき上司は、研究や発表の内容について、論旨が一貫しているか、論理の飛躍はないか、発表の態度はどうか、などという観点で聞いたことでしょう。
実際に、対策が必要かどうか、という点に思いが及ばなかった、というのはありそうなことです。
「発表者は落ち着いて話していて、また、論理の展開に無理がなく、なかなかよかったと思います。」
というようなコメントで終わっていた可能性があります。
あるいは、
「可能性のある最大津波の高さは何メートルですか」
「5.7メートルです。」
「それでは、現在の設備で安全性は十分ですね。」
という程度でしょうか。
朝日新聞のこの記事は、スクープなのかはわかりませんが、なかなか鋭い発見だと思います。
ですが、もう少し突っ込んで、上記のように研修の目的は何なのか、というところまで追及してほしかった、と感じます。