創作ことわざ
[2021/9/29]
水平対向エンジンという形式があります。
(株)SUBARU(旧富士重工)が長い間使ってきました。
そもそもエンジンは通常は燃料の爆発(高速な燃焼)が動力源です。狭いシリンダーの中で爆発が起こると気体は膨張し圧力が発生します。
この圧力が何かを押す力になります、基本的に直線的な力なのです。(ロータリーエンジンは別です)
クルマは車輪が回転して動くので、直線運動を回転運動に変換する仕掛が必要になります。
燃料の爆発は当然ながら振動を生じます。
水平対向エンジンは二つのシリンダーを向き合わせて構成します。この二つのシリンダーのペアを複数組み使用しても同じことです。
向き合ったシリンダは互いに力を押し付け合いますから、外部に振動が伝わりにくくなります。
私がこの水平対向エンジンの仕組みを初めて知ったとき、「うまいやり方だなあ」と感動しました。
ドカン、ドカンと爆発するのですから、その振動を抑えるのは大変なことです。それを水平対向という配置にすると、互いの力がぶつかり合って、吸収されてしまうのです。
このやり方は、非常に大きな利点であると思われました。
ところが日本の他のクルマのメーカーはそのやり方をとっていないのです。
振動をどうやって吸収するか、いろいろな工夫がなされています。
ゴムのような振動を吸収する材料を挟み込む、とか、シリンダーの数を増やして、一つ一つのシリンダーの中で発生する爆発を弱める、とか。
水平対向というやり方は、私の受けた印象では、爆発というエンジンの特性に対して、決定的に有利に働くだろうというものでした。
しかし、そうではなかったのです。
工夫することによって、水平対向エンジンの特長に匹敵する効果を実現することができるのです。
たとえていうなら、相撲の世界では、基本的に大型力士が有利ですが、小型力士でも小回りがきくということを生かして相撲を取ることにより、大型力士に対抗できる、ということでしょう。
このことについて逆の見方をすると、自分に決定的な欠点があっても、それをカバーする方法を考える、とか、その欠点が影響しない分野を選ぶ、とか、相手の欠点を探して、自分の欠点と対抗させる、とか、いろいろな方法があるのです。