本を捨てる
[2021/4/7]
【1】仕事の品格 [2021/4/6]
山崎武也 仕事の品格 2006年6月 講談社+α文庫 第二刷 講談社
第三章 上品な「超」整理法
選択とはほかを捨てること
奇しくも、この記事のシリーズの意図とぴったりです。
取っておくものを選択することは、そうでないものを捨てることに他ならない。
なるほどね。
価値のあるものをきちんと保存する、ということは、そうでないものを捨てること。
重要でないものを捨てれば、おのずと数が少なくなります。数が少なければ、その扱いは簡単です。数が多いから問題なのです。
まずは捨てることだよ、というのですね。
後悔しない書類の捨て方
いらなくなったものを捨てるとき、瞬間的にではあるが。ちょっと感傷的になる。人に限らず物の場合でも、それまで自分の身の回りにあったものと「別れる」ときは、少し哀惜を感じる。物によっては、ずいぶんと役に立ってくれたことに感謝し、それに関連した出来事を懐かしく思い出すことがある。
仕事の場では、そのつど感傷的になっている時間はない。しかしながら何等の感情もなく「ポイ捨て」をするのは、人間味にかける行為ではないか。きちんと使ったものは、やはり捨てる時もきちんとするのが道理というものだ。物にも「格」があると考え、敬意を表するのが、品格のある人のすることである。
物にも「格」がある。
本を捨てるのは抵抗があるということはよく聞きます。こういうことなんですね。「格」がある、ということ。
本とは、作者の"格"が表れているので、捨てるのに抵抗がある。そうなんでよ。作者の人格が乗り移っているのです。ですから買うのです。
私は、会社勤めを37年間しました。その間、モノづくりにかかわってきました。
今思い直してみると、モノ作りでも、作る人の精神が宿っているものです。
乾電池二本で動作するものは電池を交換するため、例えば電池室にカバーがついています。カバーの一カ所か二カ所を指で押してカバーをずらすと、カバーが外れます。
新しい乾電池をセットしてカバーをはめてぐっと力を入れると、パチッと言ってフタがロックされます。
このようなロック機構は微妙なもので、きつすぎると開けるときに強い力が必要で、開けるときに苦労をします。緩すぎると、ちょっと触ったとか床に落とした時にカバーが外れて困ります。カバーの開け閉めを何度も繰り返すと、ロックがだんだん緩くなります。
ロックがきつすぎず、緩すぎず、そしてその状態が製品の寿命が尽きるまで、支障がないレベルを保持する必要があります。
そのために、材質や形状、加工精度などが吟味されて、初めて製品として問題がないものになります。
技術者はそのために、自分の経験と周囲の人の知識や知恵、さらにはそれまでに蓄えられた製品開発上のノウハウをかき集めて、どのようにすれば問題のない、よいものができるのかを決定していきます。
つまり、多くの人の知識、知恵、成功と失敗の経験が込められているのです。
その点では、本であっても、機械部品や電気製品でも変わりはないのです。
"品格"があるはずなのです。
ところが、本のように直接的にそれを感じることは少ないのが現実です。。
上に引用した「ちょっと感傷的になる」、「少し哀惜を感じる」、「感謝し、それに関連した出来事を懐かしく思い出す」というようなことは、物と本ではかなり様子が異なるように思います。
本の場合、著者の言葉が、つまり思いが、直接的に迫ってきます。作る人と直接対面しているかのようです。
それが物の場合には希薄なのです。
こういうことで、製造した物は捨てるのにそれほど戸惑いはないのに、本は捨てるのに抵抗があるのでしょう。
この本の僅かな部分であっても、今まで書いてきたような思いが湧いてきます。
だから"厄介"なのですね。"厄介"という表現は失礼ですが。