世界での日本のランキング―World Giving Index世界人助け指数


[2019/4/21]

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【2】World Giving Index 世界人助け指数

World Giving Index 2018

World Giving Indexというものがあります。

2018年版は2018年10月に発行されています。正式名称は"CAF World Giving Index 2018"です。

次の三つの観点から評価するものとされています。

- Helped a stranger, or someone you didn't know who needed help?

- Donated money to a charity?

- Volunteered your time to an organisation?

自分の知らない人の手助けをしたか?

慈善団体などにお金を寄付したか?

団体などに対して時間をかけて協力したか?

上の3行の訳文は私個人の解釈を含んでいます。

たとえば"money"はあくまでもお金なのか。自分が所有する土地を寄付する、というのは含まないのか、というと、おそらくは含むと思います。しかし"money"と表現しているので"お金"としています。

ところで、"World Giving Index"は日本語では"世界寄付指数"と言われます。これはちょっと違うのではないでしょうか。

このことを指摘した記事があります。

「ダイヤモンド オンライン」というサイトの「おもてなし大国・日本の「思いやり指数」は世界最低レベル」という竹井善昭氏による記事です。引用してみます。(2019/4/20確認)

ところで、この「寄付指数」という言葉であるが、これはあきらかな誤訳だ。(中略)その英語のタイトルは「World Giving Index」だが、「Giving」=「寄付」ではない。(中略)「世界寄付指数ランキング」は、「世界思いやり指数ランキング」と訳すべきだと僕は思う。

私も同感で、上に書いた三つの評価項目をみても"寄付"でカバーできるものではありません。

この竹井氏の記事はいろいろと興味深いことが書いてあってとても勉強になります。たとえば"「おもてなし」と「思いやり」の違い"の部分はなるほど、と思います。

ところで、私だったら、"世界人助け指数"という表現をとりたいところです。

"思いやり"というと、"人の気持ちを思いやる"ことに重点があって、"では具体的に何か行動したのか"という点が曖昧になるように感じます。ここでは"具体的に行動したか"、が評価されているからです。

ただし、"人助け"としてしまうと、自然環境を守る活動とかペットの動物を助ける活動は含まれないことになってしまいます。

ほかの言葉では、"手助け"が思いつくのですが、それでは"お金の寄付"はカバーしきれないという印象があります。

"giving"という非常に抽象的な、広い意味を持つ言葉に対する日本語の言葉が思いつきません。(*1)

その中では"人助け"が一番近いのではないか、と考えます。

そこで、以下では、"World Giving Index"、あるいは"World Giving Index世界人助け指数"と書くことにします。

日本の位置づけ

この「World Giving Index世界人助け指数」は、日本の順位があまりにも低いので、ネット上でもいろいろ話題になっています。

調査した144カ国中の128位なのです。

前回の記事と同様に、上位10カ国を見ていきます。

総合評価を中心に見ていきます。

上位国

表1 1~10位

国名総合 人の手助け お金の寄付 ボランティア活動
順位評価点 順位評価点 順位評価点 順位評価点
Indonesia 159% 9746% 2 78% 1 53%
Australia 259% 2465% 3 71% 6 40%
New Zealand 358% 2166% 5 68% 5 40%
U.S.A. 458% 1072% 12 61% 8 39%
Ireland 556% 2564% 9 64% 7 40%
United Kingdom 655% 2963% 4 68% 23 33%
Singapore 754% 1867% 14 58% 9 39%
Kenya 854% 972% 27 46% 3 45%
Myanmar 954% 11240% 1 88% 22 34%
Bahrain 1053% 674% 25 53% 24 33%

東南アジアの国がインドネシア、シンガポール、ミャンマーと3カ国入り、オセアニアとヨーロッパは2カ国、中近東、アフリカ、北米は1カ国となっていて、平均的に分散しています。

ミャンマーは2017年までの4年間で連続して1位をキープしていました。

日本とその前後

表2 123~133位

国名総合 人の手助け お金の寄付 ボランティア活動
順位評価点 順位評価点 順位評価点 順位評価点
Armenia1230.231000.451070.151300.09
India1240.221360.31890.21010.15
Czech Republic1250.221400.26870.21720.19
Bulgaria1260.221090.42960.181440.05
El Salvador1270.221180.391290.1950.15
Japan1280.221420.23990.18560.23
Serbia1290.211320.34760.241400.06
Macedonia (FYRO)1300.21380.3700.261430.05
Turkey1310.21130.41220.121260.09
Croatia1320.21410.25720.251210.11
Mauritania1330.21210.371340.081070.14

なぜか東欧~バルカン半島~トルコというあたりの国が多く入っています。チェコ、ブルガリア、セルビア、クロアチア、マケドニア、トルコ、アルメニア。

そのほかは、アジアでは日本とインド、アフリカではモーリタニア、中南米のエルサルバドル。

ここまで来ると、残りは11カ国です。ですから、最下位10カ国ではなく、最下位11カ国を表示します。

最下位グループ

表3 134~144位

国名総合 人の手助け お金の寄付 ボランティア活動
順位評価点 順位評価点 順位評価点 順位評価点
Lao People's Dem. Rep.13420%14322%4933%1454%
Tunisia13520%10344%1397%1328%
Afghanistan13619%11041%1416%11911%
Latvia13719%13928%8821%1289%
Lithuania13819%N/aN/a9419%7718%
Azerbaijan13918%12935%1338%11412%
Cambodia14018%14418%5530%1426%
Palestine (State of)14117%12437%1387%1299%
China14217%13531%11314%1337%
Greece14317%12836%1377%1367%
Yemen14415%12636%1442%1386%

アジアでは、隣通しのカンボジアとラオス、さらにアフガニスタン、アゼルバイジャン、パレスティナ、中国、イェメンが含まれます。アフリカではチュニジア、ヨーロッパではギリシャ、そしてバルト三国のラトビアとリトアニア。

ちなみにもう一つのバルト三国であるエストニアは109位ということで比較的近い位置にいます。

人口大国の中国とインドはどちらも低位置です。

G7の国々

先進国という表現があります。

何をもって先進国とするか、については考え方がいろいろとあり、一つには決まりません。

ここではよく目にするG7について取り上げようと思います。

これにロシアを加えてG8とすることもありますが、それをいうなら中国を入れなくていいのか、と思ってしまいます。さらにインドも控えています。

ここではG7として、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、カナダ、イタリアの7カ国を取り上げます。

表4 G7の7カ国

国名総合 人の手助け お金の寄付 ボランティア活動
順位評価点 順位評価点 順位評価点 順位評価点
United States of America458%1072%1261%839%
United Kingdom655%2963%468%2333%
Canada1549%4557%1756%2633%
Germany2246%4258%1955%4626%
Italy6833%9546%4435%8217%
France7232%12237%6727%3131%
Japan12822%14223%9918%5623%

日本の順位については、人の手助けとお金の寄付で最下位、ボランティア活動で下から二番目と、まんべんなく低位置にいます。

確かに、寄付文化というものは根付いていません。外国なら、たとえば財を成した人の寄付でできた大学や美術館をよく目にします。

しかし、身近な例ではそうでもありません。

日本では全国的に赤い羽根募金とか年末助け合いとかの募金活動は広く行われています。私の住む地域では町内会(名称は自治会ですが自治の実態はなし)を通じて年4回募金活動があります。

また、スーパー、コンビニなどには募金箱が置いてあります。大災害が起こった時には義援金の募金箱があちこちに置かれ、また駅頭で募金箱を持った人たちが募金をよびかけます。

元になったレポートを読むと、"2.2 Donating money to a charity"(p.18)の項に、次のような文章が見つかります。

Data relates to participation in donating money during one month prior to interview.

この文章は、三つの評価項目のそれぞれにつけられています。過去1か月の間に何をしたか、ということを評価しているものと思われます。

つまり、お金を寄付したか、という問いには"過去1か月において"という限定が付いているようです。

日本で過去6か月の間に、という条件をつけるなら、60%とか70%の人は寄付した、ということになるでしょう。というのは日本全国に町内会の様な組織はざっくり言って少なくとも50%位の組織率があると思うので。

また、1月の時に「先月寄付しましたか」と質問されれば多くの人が12月の歳末助け合いに寄付した、ということになるでしょう。3月なら、先月は寄付はしなかった、ということになりがちです。

この調査結果の印象

このインデックスで、お金を寄付した人が日本では18%というのは低すぎると思います。それとも組織的に集めた寄付は含まないのでしょうか。

金額で制限しているのではないはずです。というのは、このインデックスでミャンマーがずっと上位をキープしているのは「少額でもこまめに寄付する精神が根付いているから」、という説明を良く目にするからです。

日本人は仲間には優しいがよそ者には冷たい、ということは良く話題になります。

田舎に移住した人が昔からの住民に差別された、とか、東日本大震災で避難した人が避難先の地域、学校でいじめをうけた、というニュースは何度も聞いています。


このWorld Giving Index世界人助け指数というものは、少なくとも日本に関しては"ちょっと違うな"という印象です。8割がそうなのすが、残りの2割は"確かにあたっている"、とも思うのです。

備考

(*1) 英語の言葉と日本語の言葉がきちんと対応しない、ということは以前に目にしたことがあります。"dog"とあれば"犬"と訳することがほとんどでしょうが、実はかなり違うらしいです。たとえばイギリス人にとっては"dog"というもののイメージは、「大型で毛は白っぽくて長く、耳は折れ、尾は垂れていて、暖炉の前に寝そべっている」、ということだそうです。日本で"犬"といえば、「中型で毛は茶色で短く、耳はぴんと立っていて、しっぽは上に巻き上がっていて、庭を駆け回っている」、というイメージです。ですから、"dog"とあれば"犬"と訳する他に手はないのでしょうが、全く違うもの、といってもおかしくはないですね。



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