世界での日本のランキング


[2019/4/19]

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【1】世界幸福度ランキング2019

世界幸福度ランキング

世界幸福度ランキングというものがあります。

2019年版は2019年03月20日に発行されています。

たとえば、huffingtonpost 2019年03月20日 17時27分 配信の記事に解説があります。

それによると、2015年から2019年までの5年間での日本の順位は、46,53,51,54,58と変化してきて、2019年は過去5年で最低でした。

このランキング表の原本は、"World Happiness Report 2019"というものです。

発行者は

"The World Happiness Report was written by a group of independent experts acting in their personal capacities"

と書かれており、具体的ではありません。

国連の中の一つの活動の結果と思われますが、詳細は分かりません。

国連との関係については、

Any views expressed in this report do not necessarily reflect the views of any organization, agency or programme of the United Nations.

と書かれており、国連に責任のある調査ではない、とされています。

また、

The report is produced by the United Nations Sustainable Development Solutions Network in partnership with the Ernesto Illy Foundation.

という表記もあります。"レポートの作成は"と断っており、調査そのものには国連は関わっていない、という逃げ道を作っているとも受け取れます。

しかし、世界の156カ国の情報を集めるためには、ある種の公的機関の後ろ盾がないとできないでしょうから、国連とは何らかのつながりはあるものと思われます。

著者として3名の情報が記されています。大学、あるいは研究機関に所属している、いわゆる専門家ということでしょう。

2012年に始まって、今年で7回目と書かれています。比較的最近始まったのですね。

上位国

それでは上位の国から見ていきます。

表1 1~10位

順位国名ポイント
1Finland7.769
2Denmark7.600
3Norway7.554
4Iceland7.494
5Netherlands7.488
6Switzerland7.480
7Sweden7.343
8New Zealand7.307
9Canada7.278
10Austria7.246

おきまりですが、フィンランド、ノルウェー、スエーデン、デンマーク、アイスランド、オランダとヨーロッパ北部の各国が並んでいます。ヨーロッパ中央部ではスイスとオーストリア、そしてイギリス連邦のカナダとニュージーランド。

この種の統計ではおなじみですね。

日本の前後

日本とその前後5位を見てみます。

表2 日本とその前後5位

順位国名ポイント
53Latvia5.940
54South Korea5.895
55Estonia5.893
56Jamaica5.890
57Mauritius5.888
58Japan5.886
59Honduras5.860
60Kazakhstan5.809
61Bolivia5.779
62Hungary5.758
63Paraguay5.743

ラトビア、エストニアはバルト三国、ジャマイカはカリブ海の島国、モーリシャスはアフリカに近いインド洋の島国、ホンジュラスは中米、ボリビアとパラグアイは南米、カザフスタンは中央アジア、ハンガリーは中欧と多彩です。

東北アジアからは韓国と日本です。

バルト三国のもう一つの国リトアニアはこの表よりもう少し上の42位でした。

日本は156カ国中の58位ですね。

あまりなじみのない国の中にひっそりと入っている印象です。

最下位グループ

表3 最下位グループ

順位国名ポイント
147Haiti3.597
148Botswana3.488
149Syria3.462
150Malawi3.41
151Yemen3.38
152Rwanda3.334
153Tanzania3.231
154Afghanistan3.203
155Central African Republic3.083
156South Sudan2.853

政情が不安定な国々が並びます。

カリブ海の国ハイチですが、ジャマイカは56位、またドミニカは77位でした。ハイチは特殊な事情があるのでしょう。シリア、イエメン、アフガニスタンなどニュースに良く取り上げられる国です。

また南スーダンは2011年にスーダンから分離独立したばかりの国で、独立戦争時の困難だけではなく、独立後も国内紛争が続いていて、大変厳しい状態にあります。

このランキングでの幸福度の評価方法

では、この幸福度とはどのようにして測定したものでしょうか。

次のように書かれています。

Our country rankings in Figure 2.7 show life evaluations (the average answer to the Cantril ladder question, asking people to evaluate the quality of their current lives on a scale of 0 to 10) for each country, averaged over the years 2016-2018.

"Cantril ladder question"については本文で説明があります。また、WorldHappiness.reportのFAQにも説明されています。

このFAQを引用しておきます。

Cantril ladder: it asks respondents to think of a ladder, with the best possible life for them being a 10, and the worst possible life being a 0. They are then asked to rate their own current lives on that 0 to 10 scale.

現在の生活状態を、想像できる範囲の最悪を0、その最高を10とする11ステップのどれに当たるか、という質問をした結果とされています。

とすると、すぐに気になるのは、国民の考え方として悪い方に評価する傾向、また逆に良い方に評価する傾向という偏りがあるのではないか、ということです。

自分の人生を悲観的に見るか楽観的に見るか、は個人差もあり、平均的な国民感情としても国によって違うでしょう。

同じような生活状態でも、人によって良い、とするか悪いとするか、これは違いがあります。

国民全体として平均を取ると、それは同じような生活状態でも、国によって回答は違ったものになるでしょう。

また、"best possible life"、"worst possible life"と言いますが、"possible life"のレンジ(範囲)は、これまた国情によって違ってくるでしょうね。

政治的も経済的も安定している北欧の人々と、シリアのように戦火に怯えて暮らす人々では、大きく違うでしょう。

同じ"5"というランクをつけた北欧の人と戦火に怯えているシリアの人では、生活の質(quality of life)は全く違います。

でも、個人の感想以外に幸福度を測る方法はない、というのも事実です。

「あなたは大変幸福だ(あるいは不幸だ)と言っていますが、客観的に見るとそうではないですよ」などと決めつける訳にはいきません。

「本人が感じている幸福の度合い」がすべてなのでしょう。

つまり、この幸福度ランキングは、個人個人が生活状態について幸福だ、不幸だ、と感じているか、という評価である、ということになります。

日本人はどのくらい幸福だと感じているか、という点では、世界の156カ国のなかで58番目にいる、ということです。

"幸福度"というと、客観的な指標があるかのように感じてしまいますが、正確には"幸福感"と言うべきですね。

世界の地方ごとの比較

世界の地方ごとの評価点を比較してみました。

アジア、アフリカ、ヨーロッパ、北米、中南米、オセアニアというように分けると、北米とオセアニアがそれぞれ2カ国しかないのですが、どちらも特徴的なのでそのままにします。

アジアはとても広いので、東北アジア、東南アジア、南アジア、西アジアなどと分けることも考えましたが、どの国がどれに対応するか、ということは微妙なところがあって断念しました。

表4 世界の地方ごとの比較

地方 アジア アフリカ ヨーロッパ 北米 中南米 オセアニア
国の数 45 46 40 2 21 2
評価点の平均 5.31 4.45 6.27 7.09 5.95 7.27
最高点 7.14 5.89 7.77 7.28 7.17 7.31
最低点 3.20 2.85 4.33 6.89 3.60 7.23

表1で、上位10カ国ではヨーロッパの国が大部分でしたが、平均値でもやはりヨーロッパは高いです。

北米とオセアニアはもっと高く、北米はカナダ(9位)とアメリカ合衆国(19位)、オセアニアはニュージーランド(8位)とオーストラリア(11位)ですが、国の数が少ないので比較はできません。

ヨーロッパの次は中南米、アジア、アフリカと続きます。

中南米が高いのは、ラテン気質の明るさという国民感情を考えるべきでしょう。

ちなみに、コスタリカは12位、メキシコが23位、チリ(26位)、グアテマラ(27位)と続きます。グアテマラは政治、経済が不安定というイメージがあるので、これほど上位に来るとは不思議です。

アジアの上位は、イスラエル(13位)、アラブ首長国連合(21位)、台湾(25位)、サウジアラビア(28位)、カタール(29位)です。産油国は強い、という印象です。

アフリカの上位は、モーリシャス(57位)、リビア(72位)、ナイジェリア(85位)、アルジェリア(88位)、モロッコ(89位)と続きます。

モーリシャスはインド洋の島国で、マダガスカルに近いためにアフリカに分類しています。アフリカ大陸に限ればリビア(72位)が最上位に来ます。政情不安をかかえるこの国がアフリカ大陸で最高の位置にあると言うことは、アフリカ諸国の厳しい状況が感じられます。

表4では最高点、最低点も示していますが、平均値と同じ傾向ですね。



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