【15】西蓮寺・常行三昧会
西蓮寺に常行三昧会(じょうぎょうざんまいえ)という行事があり、古風な行列が見られることが分かりました。行列は7日間続く行事の初日、中日、最終日の3回あります。昨年の9月に日程を調整しようとしたのですが、どうしても合わず、その年はあきらめることになり、今年、ようやく行くことができました。
なお、常行三昧会とは基本的に仏事で、読経が中心になりますが、私としては仏事の撮影ははばかるべきとの考えから、主として行列を撮影しています。
霞ヶ浦の東岸を少し走ると、西蓮寺に向かう道が分かれ、そのあたりから幟(のぼり)が続きます。常行三昧会(じょうぎょうざんまいえ)は仏立て(ほとけたて)ともいわれています。
1.西蓮寺入口ののぼり
残りのスペースが僅かになった駐車場に車を留めて仁王門に向かいます。
2.仁王門
門をくぐったところに露店がいくつか出ています。
階段を数段上ると、常行三昧堂があります。手前のテントは線香を販売していました。行列まで1時間40分くらいあるので、まだ人出は少ないです。
3.常行三昧堂
この写真の反対側に客殿があり、行列は客殿から常行三昧堂まで進み、そこで仏事を行ったのち客殿に戻ります。
幼稚園か保育園かの子供たちが来ています。最近の子供たちは行儀がいいですね。押しあうということもなく静かに常行三昧堂の中に入り、寺の由来などの説明を受けていましたが、そこでも騒ぐとかふざれるとかをする子はいません。おとなしく耳を傾けていました。
4.見学の子供たち
常行三昧堂の中にはいると「差定」というタイトルで寺名が書かれた木札が見えます。一番から六番まで寺の割当表で、これに従って、1日24時間交代で読経をしながら堂内を回ります。これを丸丸7日間続けます。昔は少なからず他でも行われていたそうですが、現在はここ、茨城県行方市の西蓮寺ただ一つになったとのこと。1000年の歴史があるのですね。
5.寺の当番表
6.寺の当番表2
しばらくして客殿に行くと、行列の開始が近づいてきた様です。駕籠(かご)が奥から運び出されてきました。4人でかつぐので、柄は大分長いです。
7.駕籠
ほこりなどを拭き、各部分をチェックします。引き戸が付いた立派な駕籠です。この写真では、屋根の一部を上に持ち上げ、また引き戸を開いたところです。
8.駕籠2
駕籠のアップ。
9.駕籠のアップ
赤と黒のコントラストがまぶしいです。黒いところは漆ですね。そして角などには金属の飾りがはめ込まれています。多分、木材の角の部分を保護するという意味合いもあるのでしょう。
10.金具
この写真では分かりにくいですが、金具にはいろいろな文様が描かれています。こういうところに格式が現れるのでしょうね。
下は、櫃(ひつ)というものでしょうか。漆塗りの箱に肩にかつぐための棒が付いています。これにもこまごまとした金属の飾りがあります。
11.櫃
行列が始まりました。
12.行列
先頭に拍子木を持った人。次が先導とでも言うのでしょうか。裃(かみしも)姿で異議を正しています。次が櫃を持った人で、その後ろに法螺貝(ほらがい)と続きます。
13.法螺貝(ほらがい)
法螺貝の音は初めて聞きましたが、意外に大きな音が出ますね。マウスピースがついているのがちらっと見えました。基本的に楽器なのですね。トランペットなどでよく見るように、時々たまった唾を出すような動作が見えました。
行列の終わり近くに駕籠があります。4人でも重そうですね。大きな傘の様なものは天蓋(てんがい)と呼ぶものでしょうか。
14.駕籠
行列の最後から前方を見るとこのような感じです。
15.行列の最後から
行列は常行三昧堂の正面右手から回り込むようにして、堂の裏手の出入り口に向かいます。
16.堂前を進む
堂の裏手の出入り口から行列してきた僧侶の方々が堂に入っていきます。
17.堂に入る
駕籠から降りたのは西蓮寺住職でしょうか、最後に堂に入ります。
18.堂に入る2
19.駕籠も休む
空になった駕籠がぽつんと残っていました。しばし休憩というところでしょう。
櫃が於いてありましたので、近づいて見ました。漆や金具はそれほど古びてはいません。
20.櫃
このような細工はどのような人がやるのでしょうか。手間がかかりそうですね。職人さんはいるのでしょうか。祭りに使う神輿(みこし)にありますかね。それであれば需要はあるのかもしれません。
堂裏の出入り口に僧侶の姿が見えます。僧侶が立っているところは幅が半間(90cmくらい)でしょうか。廊といっていいのかどうか分かりませんが、それが堂の内側に沿って一周するような構造で、そこを僧侶が読経しながらぐるぐると回ります。
21.堂裏の出入り口
やや間があって、読経の様な声が聞こえてきました。正面に回ってしばらく聞いていました。よく聞き取れませんでしたが、大火でこの堂が焼失したとき、常行三昧会も中断し、堂の再建に伴って復興した、という様な言葉が聞こえました。やがて静かになったので、再び堂の裏手に戻りました。
皆さんお帰りのようです。下は、住職(おそらく)が駕籠に乗り込むところです。
22.駕籠に乗りこむ
帰りの行列の始まりです。来た時と同じように、拍子木、先導、櫃、法螺貝と続きます。
23.行列の開始
駕籠が天蓋とともに進んで行きます。
24.駕籠と天蓋
このような感じで、元の客殿に向かいます。行列のとき、音は法螺貝だけです。
25.行列
客殿に付きました。全員が客電内に入るまで法螺貝が吹かれます。
26.客殿に戻る
常行三昧会の行列は以上です。このあと、堂内で読経が夜昼なく7日間続けられます。
さて、西蓮寺では大イチョウが有名です。
27.大イチョウ:波に洗われる岩
28.大イチョウ2:ギリシャ彫刻のラオコーン
29.大イチョウ3:森の中のひっそりとした泉
30.幹:秋の気配
31.彼岸花の群落
【感想】
(1) 2014年9月24日は台風崩れの低気圧が近づいていて、曇りのち雨の天気予報。何とか持ちましたが、一時ポツリポツリと降りだして心配しました。撮影条件としては良くなく、色がくすんでしまいました。
(2) 最後の数点は常行三昧会とは直接の関係はありませんが、この時期をあらわすという意味で加えたものです。特に大イチョウは県指定の天然記念物で、樹齢は1000年以上と言われています。幹や根方を良く見ると、実にさまざまな形・色が見られ、小宇宙という感じがしています。天気がいい時にじっくり撮影してみたいと思います。
(3) 現在、牛車(ぎっしゃ)についていろいろと調べているのですが、今回、駕籠、櫃の実物をみて、漆、金メッキ(昔は滅金)が大量に使われるということがよくわかりました。金色の金具の地金は銅でしょうか。腰車(または輿車)と呼ばれる(牛が引くのではなく人が引く)車について、必要とされる職人の人数が記録された資料(*1)がありますが、木工119人に対し、漆に22人、銅細工に56.5人などと記録されています。銅細工に人手がずいぶんかかるものだなあ、と感じていましたが、今回、駕籠と櫃を見て、銅板に細かな細工をして金メッキを施す作業はかなりの工数になるものだと言うことがよく分かりました。
(*1) 延喜式 十七 内匠 (古事類苑 器用部 二十七 車上 に収録されています。)