考えてみると=まじめ編=原発=


[次に進む]   [ひとつ前に戻る]   [考えてみると=まじめの巻=のトップに進む]   [ホームに戻る]

【1】想定外-東日本大震災- (2011/11/3)

想定外とは

東日本大震災において、「想定外」という言葉が話題になった。特に、地震・津波により、東京電力の福島第一発電所において甚大な原子力災害が発生したことに対して、東京電力が、「津波が主原因」であり、津波の高さは「想定外だった」、と発言したことが反響を呼び起こした。


私は、というと、想定が甘い、ということよりも、その想定に対する信頼性を問題にしたいと思う。

地震の記録というものは、かすかな物も含めてもこの2000年位の期間に限られる。
それより先は土壌・地層を発掘しての推論になる。これには時間がかかる。

「貞観の大津波」については、最近、ようやく断片的に分かってきた程度である。私は、「貞観の大津波」については、東京電力が、「まだはっきりしていないので考慮の対象外」、と言っていたのに対して、浅薄な判断である、というつもりはない。

そうではなくて、「今後予測される津波が最大何メートルであるなら、その数倍の高さの津波に対して対策すべきである」、と考えるべき、と思うのである。

最大8mの津波が発生する可能性がある、という予測なら、たとえば2倍として16mの津波に備える、ということである。

8mという値に対して、誤差は50%とする。なにしろ情報は少なく、それをもとに人間の浅知恵で予測するのだから、このくらいは見ておく必要がある。さらに、安全率を1.5倍とする(問題が出ては一大事であるから、本当は安全率は2倍とか3倍にしたいところである)。 そうすると、1.5×1.5=2.25なので、8mの津波に対しては、18mの津波に対して大丈夫なように対策することが必要である。

福島第一原発では、想定最大津波高さ 5.5m に対して、15m の津波が襲った。想定最大値にたいして、3倍の余裕を持たせる必要があることになる。 [2012/09/11 この項を追記]

費用とか環境破壊などの点でこれをあきらめる、というなら、別の方法を講じなくてはならない。現実に、三陸地方の各都市では、津波対策としては、過去の最大津波までに対応する防潮堤などのハード面を整備し、それ以上の津波に対しては、避難などソフト面の対策を行う、という方針のようである。


津波対策の新しい考え方

以下に最近見つけた記事を記録しておくが、その内容は最終決定したものではなく、議論中のことも含まれることは最初にお断りしておきたい。

岩手県大船渡市のサイト トップページ > 市政・まちづくり > 復興計画 > 復興計画策定委員会
第5回策定委員会
     大船渡市復興計画に係る土地利用のあり方及び土地利用方針図(案)について
●第5回次第(39KB)(PDF文書)  資料3 海岸保全施設の整備目標の考え方(17KB)(PDF文書)

つまり、過去の記録で見つからないような大津波が発生した場合には、家財、建物、港湾、道路などはあきらめて、人は避難することでなんとか人命だけは救う、という方針である。次のように書かれている(以下の要約は筆者)。

海岸保全施設の整備は過去に発生した最大の津波高さを目標とするのが望ましい。しかし、地形条件や社会・環境に与える影響、費用等の観点から、海岸保全施設のみによる対策は必ずしも現実的でない場合がある。この場合、過去に発生した津波等を地域ごとに検証し、概ね百数十年で起こり得る津波高さを海岸保全施設の整備目標とする。

また、この資料には、中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」中間取りまとめに伴う提言、というものがおさめられている。これには以下のような記述がある。

切迫性が低くても東北地方太平洋沖地震や最大クラスの津波を想定し、様々な施策を講じるよう検討していく必要がある。しかし、このような津波高に対して、海岸保全施設等の整備の対象とする津波高を大幅に高くすることは、施設整備に必要な費用、海岸の環境や利用に及ぼす影響などを考慮すると現実的ではない。このため、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設の整備などのハード・ソフトのとりうる手段を尽くした総合的な津波対策の確立が急務である。

100年に一度くらいの津波に対しては、防潮堤などを整備して対策するが、1000年に一度というような津波に対しては、町が津波に飲み込まれてもしかたがない、人命は避難することで救い、町は再建するしかない、という判断である。2011年の東日本大震災は1000年に一度くらい発生するといわれているので、後者である。


原発はどうするのか

しかし、原子力発電所では、こうはいかない。そこで働く人は避難できるかもしれないが、原子炉をなんとかしなくてはならないのだ。

大規模な放射能漏れが起こると、付近の住民の避難が間に合わない。全員が10Kmとか20Kmという距離を移動して避難することは短時間では無理である。したがって、避難できない人々は放射能により生命が危険にさらされる。

さらにその後、数十年の間(半永久的、かもしれない)、人間が住むことができず、町の復興もできない。それとも、半径20Km以内は立ち入り禁止にして永久にほうむるという考えなのだろうか。そのような地域が日本国内に一つや二つはできても仕方がない、と諦めるのだろうか。

こう考えると、原子力発電というものは誠に厄介なものである。自然災害を考えると、とても人間の手に負えるものではないと思う。



[ページの先頭に戻る]