なくし物―傾向と対策


[2022/7/26]

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【45】なくし物―傾向と対策

なくし物

いままで何回なくし物を探してあたふたしたことでしょうか。

年齢を考えると、その期間は軽く50年を超えるでしょう。回数は見当がつきません。

これからも同じようなことを繰り返すことでしょう。

それで、「なくした物を探り当てた」といういままでの経験をまとめてみました。

見つからなかった物は迷宮入りですので、運良く見つかった物に関しての話です。

(1) あるべきところにちゃんとあるが、探しても目に入らない

―上に何かが被さっている

―何かの陰になっている

―いつもと違う角度で置いてある(裏返しなど)

―いつもと違う外観に変わった(ティッシュペーパーの箱のデザインが違っているなど)

(2) あるべきところから少しずれたところにある

―引き出しの最上段が定位置のところ、二段目に入れた

―クルマのシートの上に置いた物が床に落ちて見えにくい

(3) ある瞬間に目の前の場所に意識的に置いて、そのことを忘れた

―メガネを玄関の下駄箱の上に置いた

―入浴時にメガネを洗面台の縁に置いた

―買い物から帰ったとき、カバンを車内に置いたまま、買い物の袋だけを家の中に運んだ

(4) 置く場所を変えることにしたが、場所を変えたことを忘れた

―部屋を整理したときに、机の引き出しに置いていた物を書棚に置くことにしたが、そのことを忘れた

(ログイン時のキーワードを変えたことを忘れた、というケースに似ている)

(5) 何かのはずみに落としてすぐに探したが、見つかりにくい場所に移動して見つからない

―落とした硬貨がズボンの裾の折り返しにすっぽりはまった

―落とした弾みに転がって(弾んで)、思いの外遠くに移動していた

(6) 何かのはずみに落としたが、その瞬間は全く気づかず、後になってないことに気づいた

―図書館に本を返却するとき、駐車券と返却する本を片手に持っていて、建物の入り口で本が何冊あるか数えようとした時に駐車券を落としたが気がつかなかった

―クルマのシート上に置いたバッグがブレーキの弾みで床に落ちた

(7) 誰かが使った(移動した)が、元の位置に戻さなかった(定位置を理解していなかった、元位置に戻す必要はないと思った)

―ある場所に置いてあったが、別の人が棚の整理の時に移動したが、そのことが伝わっていなかった

(8) 自分が使ったが元の位置に戻さず、使ったことを忘れた

―はさみ、爪切り、ボールペン、など、日常的に頻発する

(9) 間違って別の場所に置いてしまった

―別のものを移動してかたづけるときに、誤って(無意識に)一緒に移動した
(意識的ではないので単になくなったように感じる。)

(10) 置いたときから長時間経過して、どこに置いたか記憶がない

―レンタル品の付属品を入れた箱をどこかにしまって、数年後にレンタル品を返却するときに付属品の場所が思い出せない

―引っ越しの時にどこかに紛れて、しばらくは必要がなくて使わず、使いたいときに場所が分からなくなった

対処のしかたを考える

(1) あるべきところにちゃんとあるが、探しても目に入らない

「物が見つからないが、ここにあるはずなんだけど」という場合、まずはこのケースを 考えるべきでしょう。そうでないと、探す時間が無駄になりがちです。

つまり、ここにあるはずという物は、可能性としてはそこにあるというのが一番確率が高いのです。

何かの下になっていて見えなかった、とか、単に横になっていて気づかなかった、などというのは、見つかったときに本当に腹が立ちます。

とはいえ、ざっと見て見当たらない、という場合、もっと注意深く探す必要があります。

ここにはないよな、と一部を除外することは避けなければいけません。ここにはあるはずがない、という場所も、機械的に残らず探します。

「この近くにあるんだ」と信念を持って、一段と注意深く探すのです。

「ここにきっとあるんだ」と信念を持つことが大事だと思います。「ここじゃあなないのかな」と疑念を持ちながら探すと、見逃すことが多くなります。

(2) あるべきところから少しずれたところにある

上記(1)でどうしても見つからないときには、探す範囲を広げます。

上下、左右、手前、奥などと探す範囲を広げます。

位置がずれた、ということはよくあります。

他の物を探したり、片付けたりをする際にうっかり動かしてしまうとか、引き出しに入れるスペースがなくて、とりあえず隣の引き出しに入れたとか。

冷蔵庫の中などはひっきりなしに場所が移動します。入れる物が常に変わるからです。

これに対しては、上記の(1)の様 に注意深く探すということの他に、あらかじめ置く場所を厳密に固定する方法が有効です。

いつもの場所に空きスペースが足りなかったら、詰めたり、場所を入れ替えたりしながら、なんとかして(時間がかかっても)いつもの場所に置けるようにします。

物の位置を入れ替えて無駄なスペースをなるべく減らすと、意外に空きスペースができるものです

(3) ある瞬間に目の前の場所に意識的に置いて、そのことを忘れた

私の場合、メガネとか腕時計はこの問題がよく起こります。

そのときは「ここに置いた」とはっきり認識していても、以外に忘れるものです。

昔このような事がありました。トイレに行こうとしたときに腕時計が邪魔な気がして、後で考えると"わかりにくい"場所に置きました。そのとき「ここに置くと忘れそうだ」と思ったのですが、「いやいや、忘れそうだ、と思ったくらいだからまさか忘れないだろう」考え直しました。その結果、見事に忘れたのです。

「ここに置くと忘れそうだ」と意識をもっていたのに忘れたのです。人間の意識というものを信じてはいけないとつくづく思いました。

「覚えているだろう」ということに期待をしてはいけないのですね。

ですから、対策としては、面倒でも「後で探しやすい」場所に置きに行くべきです。つまり「探しやすさ」で置き場所を選ぶべきです。

(4) 置く場所を変えることにしたが、場所を変えたことを忘れた

物は増えていくので、古い物を整理して場所を確保する必要が出てきます。これは仕方がありません。

使用頻度が下がったら、その場所は他の物に譲らなければいけません。当然、新しい場所は最初はなじみがありません。

場所を変えたことは覚えていても、それがどこなのかが分からない、ということに対しては、全体として、どのような物はどこに置く、という基本方針を固めておくのが一番と思います。

これは、「場所を変えたことさえ覚えていない」という場合にも有効です。

この種の物はここに置く、という基本方針があれは、探す場合にも対象エリアが限定できます。

(5) 何かのはずみに落としてすぐに探したが、見つかりにくい場所に移動して見つからない

これはまさに"当惑する"代表です。

「あっ、落とした」と生々しい記憶があるのに、いくら探しても見つからないのです。

2秒前には手に触れていたのに、どこかに行ってしまった。ほんとに不思議です。

ずいぶん前の出来事ですが、今でも鮮明に覚えていることがあります。

硬貨を手に持っていて、つい1枚落としました。「あっ、落とした」と思ってすぐに探したのですが、見つかりません。

丸い物なので、遠くまで転がっていったのか、と思い、部屋のすみまでかなり時間をかけて探したのですが見つかりません。

何日か過ぎて、ズボンを洗濯に出そうと丸めたときに硬貨が一枚落ちてきたのです。ちょうどズボンの裾を持ち上げた時でした。つまり、硬貨を落としたとき、それがズボンの裾の折り返しのところに「すぽっ」とはまったのでした。

「これでは気がつかないはずだ」と思いました。部屋のすみずみまで探したのですが、一番身近なところにあったのです。

(6) 何かのはずみに落としたが、その瞬間は全く気づかず、後になってないことに気づいた

つい最近のことです。しばらくぶりにウォークマンを聞こうとした時に、充電ケーブルが見つからないのです。いくら探してもないので、仕方なく新しく購入しました。しばらく後で、それが見つかりました。

ウォークマンや充電ケーブル、電源アダプターなどは一つの箱に入れて出窓に置くようにしています。出窓は床から少し高い位置、ちょうど膝の位置あたりにあります。その手前には、親から譲り受けた文机が床に置いてあり、その裏側に落ちていたのです。

文机は、使わないが捨てるのももったいない、ということで置いていたもので、実際、使うことは全くありませんでした。

探したときには、出窓の周りや床の文机の手前は探したのですが、文机の裏側は見ませんでした。そこに隙間があることを意識していなかったのです。

探し方が徹底していなかったともいえますが、いつなくしたかが分からないと、探すべき範囲が広がってしまいます。

いつなくしたかが分からないと、どこでなくしたのかが分かりません。つまり探す対象範囲が広くなります。

この充電ケーブルの場合、もしかしたら、このところずっと置いてあった出窓の周囲ではなく、それ以前に使っていた場所も探さなくてはいけなくなります。


別の経験では、買い物に行ってクルマの駐車券をなくしたことがありました。シャツの胸ポケットに入れたことは覚えていましたが、ないのです。

胸ポケットには携帯電話がありました。少し前にベンチに座って電話していたのです。

駐車場にクルマを入れたときには駐車券は確実にありましたから、それ以後の行動を、時間軸を逆にたどっていくと、一番最後に胸ポケットに触ったのはベンチで電話した時なので、とりあえずその場所に行くと、ベンチの下に駐車券が落ちていました。たぶん携帯電話を胸ポケットから取り出したときに、それに駐車券がくっついていて、自然に落ちたと思われます。

それ以降は駐車券は常にバッグの外側のポケットに入れるようにしています。ここは駐車券を入れるには大きすぎて、他の物を取り出すときに間違って落ちるという心配があります。それで、そのポケットを探るときには常に駐車券を確認するような習慣ができました。


こうして駐車券の紛失は長い間起きなかったのですが、最近起きてしまいました。上記した図書館のケースです。

結果的には駐車券をバッグに入れなかったのが原因です。なぜ入れなかったかというと、図書館では1時間までは駐車が無料になります。そのためには、入り口で駐車券を機械に入れて、図書館に用事があって駐車場に車を入れたことを証明す必要があります。

このように駐車券は建物に入ってすぐに使うため手に持っていたのでした。カバンのポケットにいれてすぐに取り出すのが面倒だったからです。

そのときはクルマとカバンの中をさんざん探し、本の中にはさんだかもしれないと、これまた本をぱらぱらとめくり、結局なくて、クルマから図書館の入り口までの経路を戻ったとき、まさに図書館の入り口のドアを開けたところに落ちていたのでした。

このような場合、どうすれば良かったのかと考えると、面倒ではありますが確実にバッグのポケットに入れることを徹底するしかなさそうです。

ただし、カバンにカードがさっと入れておける場所があれば常にそこに入れるということを徹底できるので、次回カバンを買い換えるときには、カードを入れるスペースがあるものを探すつもりでいます。

(7) 誰かが使った(移動した)が、元の位置に戻さなかった(定位置を理解していなかった、元位置に戻す必要はないと思った)

これは、私が移動してそのままにしたためにどこにあるか分からなくなったと妻に責められることが多い物です。

爪切りとかボールペンとかの小物が多いですね。移動した本人があまり意識していないのでやっかいです。

基本的には定位置に戻す、ということを徹底することが重要なのでしょう。

会社勤めをしていた頃には、仕事の効率化のための一つとして、"定位置"という事が盛んに言われました。面倒くさいなあと思っていましたが、今になって振り返ると、「なるほど真実だ」と思うようになってきました。

これに類することで、「こまめに消灯する」ということがあります。会社勤めの頃には上司から言われましたが、今では妻に言われています。

(8) 自分が使ったが元の位置に戻さず、使ったことを忘れた

これは上記の(7)に似ていますが、こちらは、自分で使ってそのままにして、自分が「ない、ない」と騒ぎ立てるケースです。

自分が使ったことを覚えていないので、家族が使ってどこかに置いたのだ、と誤った疑いをついかけてしまいます。

とにかく自分に記憶がないのでやっかいです。それで、見つかると、「ああそうだ、あのときに使ったのか」となるのですが、最近はそれもなくなり、「ああ、そうだ」と思い出すことが少なくなってきてしまいました。

「これこれのものが見つからないんだけど」と妻に言うと、「さっきあそこで使っていなかった?」と言われてそこに行くと見つかる、と言うケースが増えてきました。

そう言われても思い出さないというのは困ったものです。

(9) 間違って別の場所に置いてしまった(置きっ放しにした)

これは単独ではなく、何か別のものと一緒にしてしまったという場合が多いです。

たとえば郵便受けから郵便物を取り出して手に持ち、戻ってきたときにテーブルの上に本を重ねていたことに気づき、本を片付けるときに手に持っていた郵便物も一緒に書棚に入れてしまう、というようなものです。

また、クルマで買い物に行き、帰ってきて、買い物を家の中に持ち込むときに、バッグも一緒に持ってくるのですが、買ったものはまずは冷蔵庫の前に置きます。要冷凍品や要冷蔵品をできるだけ早く冷蔵庫に入れるためです。そのときに、バッグをどうするかが非常にあやふやです。

冷蔵庫の近くに置いたり、玄関の上がり框(がまち)に置いたり、リビングに置いたりと、一定しません。要冷凍品や要冷蔵品に注意が行っているからです。

場合によってはクルマの中に置いたままだったりします。買った物を手に持つときにバッグが邪魔になり、ちょっと動かしてそのままうっかり忘れてしまうのです。

これらは、もともと定位置に置くのではないためです。定位置という概念から外れています。最初の例では、見つからないものであっても、家の中にあるはず、という見当はつきます。しかし、第二の例ではバッグを店に忘れてきた、という可能性も出てくるのでやっかいです

実際に、家の中で見つからず、車の中でも見つからず、店に電話をしたこともあります。「忘れ物としての届け出はありません」と言われ、もう一度車の中を見ると、薄暗い車内の床に落ちていた、という結果でした。

見つかったとき、どうしてそのような場所にあるのか、思い出せるときと、まったく思い出すことができない場合があります。

物ではありませんが、パソコンでのファイルを整理しているときに、数個のファイルを移動しようとして、誤って別のファイルも選択してしまい、一緒に移動してしまう、というケースもあります。

「なぜこんなところにこのファイルが」と思うときがときどきあり、操作を間違えたみたいだ、と感じることがあるのです。

移動なら良いのですが、削除してしまうと困ります。なぜかこの場所に保存しておいたはずのファイルがないのです。

最近、このように手作業で間違えることが増えてきたように感じます。視力の低下が原因なのか、細かな手作業がうまくできなくなってきたのか。最近は医者に、「加齢が原因です」と言われることがたび重なってきました。

このように、無意識にやってしまったことについては、対策することは難しいです。

何をやるにも慎重に、というくらいしか思い浮かびません。

(10) 置いたときから長時間経過して、どこに置いたか記憶がない

これなどは不可抗力に近いものがあります。

典型的な例では、引っ越しに伴って場所が分からなくなるという場合です。

大量のものを取り扱うとき、間違いはいろいろと発生します。運搬中に落ちたものはとりあえずそれらしい場所に置きますが、正しい位置は違っていることがよくあります。

とくに当分は使わない、というようなものに対しては注意力が低下し、「まあこの辺に置いておこう」などと言うことになりがちです。

また、時間がたつと、ここにはこのようなものを置く、というルールが少しずつ変化してきます。

「ここにどうしてこのようなものがあるんだ」という場合、考えてみると、「これはあの頃はこういう分類にしていたなあ」と思い出せることがありますが、逆に探す場合には、昔はどのように分類していたか、については思い出せないことがあります。

できれば、一定周期で在庫チェックするのが良いのでしょう。ものが「正しい位置に」「正しい数だけ」「ある」ということをチェックするのです、

組織としてそのようなチェックを定期的にすることは行われているでしょうが、個人レベルでは難しいです。

対処のしかたを考える

結局、具体的な対策としては、定位置をなモル、ということぐらいしか思いつきません。

そして見つからない、という時には、本気になって徹底的に探す、ということですね。

「何事にも注意深く、慎重に、丁寧に」、という事は大事な事ですが、これからさらに老人度が進む私にとっては悪化する可能性しか考えられません。悲しいことですが。


実は、この記事のように、忘れ物に思いを馳せ、また忘れ物について分析・検討することは、多少なりとも良い効果が期待できるのではないか、とひそかに思っています。


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