昔に比べて日本の社会は良くなっていないと感じる身の回りの20のこと


[2018/10/1]

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【22】昔に比べて日本の社会は良くなっていないと感じる身の回りの20のこと

昔に比べて今の日本の社会は

良くなったと感じることについて、一つ前の記事に書きました。

書きながら違和感を憶えました。「良くなったというのは"表の顔"で、よくなっていない"裏の顔"もあるでしょ」、という違和感です。

ということなので、前の記事の項目にそって書いていきます。

表1 昔に比べて日本の社会は良くなっていないと感じる身の回りの20のこと

No 良くなったこと 良くなっていないこと
1 犬の放し飼いがほとんどなくなった 放し飼いの猫、野良猫は増えた(より目立つ)
2 道路につばを吐く人がほとんどいなくなった
3 立ち小便をする男がほとんどいなくなった
4 酔っ払ってふらついて歩く・大声で喚く人が減った
5 公共・家庭のトイレがきれいになった
6 列を作って待つことができるようになった
7 知らない人と会話する時の言葉がていねいになった
8 演奏会や美術展などの文化行事に出かける人・話題にする人が増えた
9 ぬかる道路がなくなってきた アスファルト化、コンクリート化により、都市型水害(洪水)が増えている
10 田舎と都会における情報格差が縮んできた 経済格差・人口格差は逆に開いている
11 海外事情がわかりやすく、海外との交流もしやすくなった それなのに海外のことを知りたがらない、出かけたがらない
12 顔が穏やかな人が増えた 不機嫌そうな顔つきが目立つこともある
13 交通事故死者数が減ってきた 高齢者の交通事故数、死者数は増えている
14 長生きの人が増えた少子化・高齢化が同時に問題になってきた、高齢で過ごす期間で幸福感が少ない
15 男が家事をすることが少しずつだが増えてきた
16 病院で医師・看護師に金品を渡す慣習(付け届け)がなくなった
17 たばこを吸う人が減ってきて、禁煙の場所が増えてきた
18 天気(台風を含む)の予報の信頼性が上がった 地震・津波は目立った進歩なし(発生後の報道が早くなったのみ)
19 廃棄物・ゴミの処理が以前よりもきちんとされるようになってきた まだまだ問題は出ている
20 若者の身長が伸びた(特に脚が長くなった) 子どもの体力・運動能力は低下している

生きてきた世代や土地柄などによって印象が違うでしょうから、私なりに感じた事を書いておきます。

1. 犬の放し飼いがほとんどなくなった
→放し飼いの猫、野良猫は増えた(より目立つ)

猫の放し飼いは多いですね。増えているような気がします。いや、放し飼いではなく、野良猫が増えているとも考えられます。

猫は人を噛んだりしないので、問題は少ないのですが、庭に糞をすることと、発情期に鳴き声がうるさいことが問題です。

2.道路につばを吐く人がほとんどいなくなった

問題ありません。

3.立ち小便をする男がほとんどいなくなった

問題ありません。

4.酔っ払ってふらついて歩く・大声で喚く人が減った

問題ありません。

5.公共・家庭のトイレがきれいになった

問題ありません。

6.列を作って待つことができるようになった

問題ありません。

7.知らない人と会話する時の言葉がていねいになった

問題ありません。

8.演奏会や美術展などの文化行事に出かける人・話題にする人が増えた

問題ありません。

9.ぬかる道路がなくなってきた
→アスファルト化、コンクリート化により、都市型水害(洪水)が増えている

大雨が降った時、大都市の道路を勢いよく流れる雨水、マンホールから噴き上げられる雨水、地下鉄の駅の階段から構内の方に流れていく雨水、などの映像をよく目にします。

雨水の排水はある程度は処理するための装置・施設があるのでしょうが、処理可能なレベルを簡単に越えてしまう。その点では異常気象の問題とも関わります。

10.田舎と都会における情報格差が縮んできた
→経済格差・人口格差は逆に開いている

田舎にはもともと仕事が少ないです。それで若者は都会に行きます。田舎の経済活動はますます低下します。

経済活動が低下し、人口がますます減ります。

のびのびと暮らしたい、と、都会から田舎に移住する人も出てきています。インターネットがあるから田舎でも仕事ができる、という一面があることは一つ前の記事で書きました。でもこういう人はまだ少ないでしょう。

田舎に移住しても地元に溶け込めない、とか、逆に古くからの住民が移住してきた人を排除する、という事も時々ニュースになっています。

11.海外事情がわかりやすく、海外との交流もしやすくなった
→それなのに海外のことを知りたがらない、出かけたがらない

海外を目指す人が減っています。

20代の海外渡航者が減っている、という統計があります。ただし、人口の動態(20代の若者の数が減っている、など)を考慮すると、目立って減ってはいない、というデータもあります。たとえばここに分析データがあります

「海外事情がわかりやすく、海外との交流もしやすくなった」にも関わらず、「増えていない」、というのはやはり何か原因があるのだと思います。

若者が内向きになった、と言うことでしょうか。

若者の貧困が問題である、という面もあるでしょう。

「海外事情がわかりやすく、海外との交流もしやすくなった」ので、未知の世界に憧れる、という事が弱くなってきたということも一因だと思います。

海外がめずらしいものでなくなったのでしょう。

日本の社会の成熟のため、という印象もあります。

準平原という言葉があります。地面がいろいろな造山活動で盛り上がり、侵食によって険しい峰と谷ができ、それがさらなる浸食や風化などによって峰が削られ谷が埋められてなだらかな地形になる。これが準平原です。

日本の社会が活発な活動期を終え、万事なだらかに、穏やかになって、変化が少ない社会、いわば"準平原的な社会"になってきている。

私にはこのような印象があるのですが、これはシニア世代の私だからそのように思うだけなのでしょうか。

12.顔が穏やかな人が増えた
→不機嫌そうな顔つきが目立つこともある

不機嫌そうな顔つきが目立つことは気になります。特にシニア世代です。

上で、"列を作って待つことができるようになった"と書きました。

その中で、たとえば食品スーパーのレジで列を作って並んでいる時に、険しい表情の人を見ることがあります。多くはシニア世代の男です。

シニア世代の男にとって食品スーパーは居心地が悪い場所です。しかし、何かの事情で行かざるを得なくなったのでしょう。どうしても機嫌が悪くなります。

ときどき、シニア世代が"キレやすい"ということが話題になります。最初は"仏頂面"、やがて"怒り"の顔。

いやなことはどこにでもあるんですけどね。

会社などに勤めている時にはそのようなことはいくらでもあるでしょう。我慢をするから給料をもらえるのだ、と、最初から割り切るしかありません。

勤めが終わった後では、我慢しても何も得るものが無い。でも世の中、いつまでたっても我慢することがあるのです。

自分が気に入るような世の中なんてないのです。

13.交通事故死者数が減ってきた→高齢者の交通事故死者数は減っていない

内閣府が発表した平成29年交通安全白書(概要)における特集「高齢者に係る交通事故防止を参照すると、平成18年から平成28年の75歳以上の運転者による(交通)死亡事故件数は横ばい(微増に近い)のですが、全年齢では減っているため、高齢者の占める割合は7.4%から13.5%へと増加しています。

この資料では、他に、横断中死者における歩行者の法令違反の内容、交差点出会い頭衝突事故における直進自転車法令違反の内容についても報告されていて、内容の分析にもまして、75歳以上の件数が他の年齢層の件数を圧倒している事が示されています。

高齢になると法令違反が増える、というのは悲しい事実です。

目や耳といった感覚器官の感度低下と共に、判断能力の低下があるのだろうな、と想像します。

これは仕方が無いこととして、一つの望みは、これらの高齢者は子どもの時にクルマ社会の時代を経験していないことがその要因かもしれない、ということです。

クルマ社会における生き方を体で覚えていないのです。

そうであれば、あと20年もすれば、高齢者と言っても小さい時からクルマ社会を生きてきた人になりますから、交通事故死者数も減ってくることが期待できます。

これとは別の問題があります。

高齢者が、家族からクルマの運転を止めるように強く説得されてもそれに応じず、ついに重大な事故を起こす、というニュースを見ることがたびたびあります。

被害者ではなく、加害者の立場になるのです。

そういう人たちは、クルマ時代に"遅れて参加"して、そしてクルマの便利さ、楽しさを知った人が多いのではないでしょうか。だから、こんな便利なものを手放すわけにはいかない、という考えになりがちです。

そうであるなら、これからは「今までクルマは十分楽しんだ、もういいか」、と考える人が少しずつ増える、という期待が持てます。。

14.長生きが増えた
→少子化・高齢化が同時に問題になってきた、高齢で過ごす期間で幸福感が少ない

少子化と高齢化は必ずセットになるというわけではありません。

高齢化が進んでも少子化でなければ、子どもがたくさん生まれることにより、高齢者を支えることの問題は少ないでしょう。

少子化が進んでも、高齢化が進んでいなければ、高齢者を支える、という点では大きな問題は生じません。別の問題はありますが。

日本では同時に進んでしまいました。

また、高齢で過ごす期間において幸福感が少ない、という問題もあります。

昔は、たとえば隠居して現役を退いた後の生活で、不幸だ、と感じることはそれほど多くはなかったのではないか、と想像します。

この問題をまともに扱おうとしたら、このサイトに書いたすべての記事と同じ分析・検討をしてもまったく足りないでしょう。

高齢化はどうしても進んでしまうので、少子化の方が対策しやすいと思います。

子どもを産みたいが何かの事情で諦めている、ということの対策が最初にやるべきことでしょう。

経済的な問題は対策がしやすく、現にいろいろな自治体で行われています。様々なタイプの補助金など。

生んだ後の子育ての負担を小さくする、という点では、保育所の充実とか、養育に関する父親の参加を増やす、などはしやすい。

父親が子育てにもっと参加させるためには、これは簡単ですよね。たとえば子が生まれたら父親に産休を取らせることを勧める。もちろん産休の期間は有給です。出産の時期は半年前にはおよそ見当が付くのですから、産休の穴埋めはできないはずがない。

そして産休の取得率が低い企業などに対しては税負担を高くする、などの方法でこれを推進する。いや、これでは子を持つことに対して妨げになるかも知れません。産休の取得率が高い企業に対して税負担を低くする、という方がいいですかね。

やる気があれば、ですね。

役所では課税するわけにはいかないというなら、市町村に対しては地方交付税を下げる、とか、名前を公表して社会的に制裁する、など。

15.男が家事をすることが少しずつだが増えてきた

少しずつ改善しているので、このまま行けば良いのではないでしょうか。

16.病院で医師・看護師に金品を渡す慣習(付け届け)がなくなった

この悪習は、世界的に根絶宣言がでた天然痘(国立感染症研究所の情報)程ではありませんが、ローカルには根絶宣言が出され、根絶に近づいているペスト(出展は同前)位には減ってきているので、このままで良いのではないでしょうか。

17.たばこを吸う人が減ってきて、あわせて禁煙の場所も増えてきた

たばこを吸う人の数は一定数でサチる(飽和する)でしょう。そのレベルに近付いていると思われるので、このままで良いでしょう。

18.天気予報(台風を含む)の信頼性が上がった
→まだまだであり、また地震・津波・洪水・山崩れなどはほとんど予報できていない

降水の予想が地図で表示され、たとえば2時間後はこれこれ、4時間後はこれこれ、などと地図で詳しく報道されたりします。雨が降る地域が表示されますが、実はまるで当たっていません。

高性能計算機で計算しても、実はその正確さは低い。計算はできるのです。正確ではないのです。

1時間後に大雨になる、という予報を見て、なるほど、この雨雲がここに来るのか、と思い、洗濯物を室内にとりこんで外出すると全く降らない。帰宅して確認すると、雨雲はそれていった、とか、消えていた、とか。

地震・津波はこんなものではないですね。

東日本大震災は記憶に新しいです。日本のもっとも権威ある学者がまるで予想できなかった。

福島第1原発の付近の津波は日本のもっとも権威ある専門家が集まって最大5mという予測をして、東京電力はそれを元に5m程度の津波対策をしていたら、そこに3倍の15mの津波が発生した。これではたまりません。

原発は止めるべき、という運動がありますが、そうするとプルトニウムを大量に保管する根拠がなくなる。プルトニウムは核爆弾に転用できるので核抑止力になる、そのためには原発を隠れ蓑にするのが良い、という論理が生まれます。そうすると原発は防衛問題と密接に絡んできて、問題はますます広がります。

地震・津波と洪水・山崩れは性格が異なります。

洪水・山崩れは、例外はありますが、以前から危険性が分っていることが多いのです。

明治以降でも3回、4回と大洪水になっている、とか、ここに家を建てたらどう考えても山崩れが怖い、と誰もが思うだろう、というところに家がある、というケースが結構あります。

19.廃棄物・ゴミの処理が以前よりもきちんとされるようになってきた

たばこと同様に完璧なまでには問題解決とはならないでしょう。しかし、いずれにしても改善していく方向でしょうから問題なしとします。。

20.若者の身長が伸びた(特に脚が長くなった)
→子どもの体力・運動能力は低下している。細い人が多い。つまり体つきは華奢になった。

体力・運動能力の低下と、細い体つきの人が多い、という二つの傾向があります。

肉体的に強いこと、たくましいことが評価されない、ということなのか。

テレビゲームばかりやっているから、とか、スマホをいつもいじっているから、などと言われます。

私は、この問題は、上の No.11 に挙げた"内向きの傾向"の一つと考えています。

No.11 は海外に対する態度を取りあげたものですが、極端な場合には海外どころか、家の外に対しても出たがらない、という問題です。

家の中より家の外の方がずっと刺激があって面白い、海外ならもっともっと面白い、はずだと思うのです。

外がおもしろいことは分っているが、それでも家の中でいい、という感覚なんだと想像しています。

安定志向なんですかね。

「一回きりの人生、そんなことで満足なのかなあ」と、自分のことはさておいて、つぶやいてしまいます。



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