「5人のうち3人」とは


[2018/9/14]

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【20】「5人のうち3人」とは

あるサプリメントの広告

あるサプリメントの広告で、次のような趣旨の広告がありました。

「5人のうちの3人に効果がありました」

"5人"と言っていますが、本当に5人だとしたら、あまりにも少なすぎます。

"5人のうちの3人という割合"、という意味でしょう。

私が違和感を憶えるのは、効果を訴えるのにはちょっと少ないのではないか、ということです。

500人のうち300人だったらどうでしょうか。

もう少し深く考えてみましょう

「5人のうち3人」の意味すること

サンプルの総数を仮に500人とします。

"5人のうちの3人という割合"に当てはまるのは、最も少ない場合は250人です。

250の5を四捨五入して300となるので、500のうち300人、5人のうち3人です。

500人のうち、250人は"良くなった"という結果が得られた。

ワーストケースを考えると、残りの250人は"悪くなった"と回答した、ということまで考えられます。

これはそれほど極端な考え方ではありません。

回答を、"良くなった"、"変わらない"、"悪くなった"の3択と設定すると、ちょっとは良くなったがたいした違いではない、という場合、"変わらない"を選びがちです。

中立的な"変わらない"という項目を選択肢に入れると、回答はそこに集中しがちになります。

そこで、"良くなった"、"悪くなった"の2択にする、というやり方です。

ということは、250人が"良くなった"、250人が"悪くなった"、という場合でも、「5人のうちの3人に効果がありました」といえることになります。

「5人のうち4人」ではなかったことの意味

"5人のうちの4人という割合"ではなかった、ということでもあります。

宣伝広告ですから、効果が高い方がいいのです。でも"5人のうちの4人という割合"には満たなかったのです。

"5人のうちの4人という割合"は、先ほどの500人をサンプル数と仮定する、という場合、350人に達しなかった、という事になります。

最大で349人だった。

効果があったのは 250~349人、効果が無かったのは 151~250人です。

パーセントでいうと、効果があったのは 50~69.8%、効果が無かったのは 30.2~50%です。

ここで±0.2%の数値がでてきますが、これはサンプル数を500にしたからで、サンプル数を多く取れば0.2%という値は小さくなります。

正確には、50%≦[良くなった]<70%、30%<[悪くなった]≦50% ということになります。

想像すると

宣伝する側の立場では、もし"良くなった"という回答が500人中の349人だったら「いやー、惜しかった。"悪くなった"という人の内の一人が"良くなった"を選択していたら、"5人のうち4人"といえたのに」と悔しがるでしょうね。

いや、それだったら、"約70%の方が"という表現をしそうです。

ということは、事実は、50%にかなり近いのでは、という可能性が高いのではないか、と思います。

たとえば、51%が"良くなった"、49%が"悪くなった"という結果だった、とか。


「5人のうちの3人」という表現をせざるを得なかった広告担当者も"つらかった"でしょうね。つい、私自身の現役サラリーマン時代の仕事のことを思い出してしまい、切ない気持ちになってきました。


追記

数字を"こね回す"といろいろな表現が可能ですが、それを正当化する理屈を"ひねり出す"ことも可能です。数字が出てきたら、誤差がどのくらい含まれているのか、あるいは含まれ得るのか、ということを注意して見ないと、だまされることがあります(その場合は、"勝手に誤解したのだ"、と言われてしまうでしょう)。



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