創作ことわざ
[2020/11/9]-43日目
相続財産が他の相続人より少ないとか、もともと相続財産がとても少ないこととか、相続には不満に感じるケースがいろいろとある。
親から受け継ぐとしたら、もっとも重要なものは何だろうか。
財産ではないだろうね。
預貯金やら、不動産やら、証券やら、そういうものは、確かに当座の助けにはなる。
でもすぐになくなるよ。
中にはなくならないものもある。
この世の中を渡る術(すべ)だよ。
この世の中でうまくやっていくワザを手に入れたら、それが一番いいんだ。
といっても、ちっとも難しいことではない。
まず、社会に対する誠実さ、ということだよ。
どうしてかって?
社会に害を与えるとたくさん反発を買うのだよ。そんなことに自分のエネルギーを費やしていたら、やりたいことがやれないよ。
周りの人びとが喜ぶことをしたら、逆に困ったときには助けてもらえる。
次に勤勉ということ。
今までの世の中で、勤勉でない人が成功した例(ためし)はないだろう。
では、この二つで十分か、というと、そうではないんだね。
少しだけ、運というものが必要なんだ。
刺身にわさびを添えて味わいが増すとか、パスタ料理にバジルをかけるとたちどころにイタリアンの雰囲気が出たりする。
量は少しでいいんだが、効き目は大きい。
誠実と勤勉ということは自分の努力次第だけど、運はひとまかせ。
でも、運が近づいた時に見逃さない、という点では、努力の結果だ。
そもそも、親から相続財産を受け継ぐとしたら、その財産は、先祖の誰かが、誠実で、勤勉で、そして少しの運を見逃さずに作り上げたものではないかね。
そのようなものをもらおうと考えるより、自分で作り上げることを考えたらどうだ。
自分の努力することで財産を作り上げたら、努力なしで相続で財産を手に入れるより喜びがはるかに大きいし、世の中から賞賛も得ることになるのだよ。
このように語ると、神様はふうっとため息をもらしました。
どうして人間は、不誠実で、怠惰で、せっかく目の前にころげてきた運を見逃す、そんな情けないことになってしまったんだろうか。
もっとも、私が作り上げた人間なんだけどな。
「まったくいやになるぜ」とつい口にして、あわてて手で口を押さえました。
「あっ、こんなことを言ったら、神様の神様に叱られる」