[2023/7/4]
次のページに進む 前のページに戻る 記事一覧に戻る ホームに戻る
このシリーズの記事は6年前の2017/5/28が最後になっていました。
2016年9月に写真展を開いて、その後はほとんど写真を撮らなくなったためです。
理由はいろいろあります。
一番大きいのは、茨城県内の重要文化財の建築をテーマに2回写真展を開き、残ったものは産業施設や旧家、教育施設など多種多様で、場所もばらばらだったことです。撮影にはかなり時間を取られそうです。
特に難問なのが「石岡発電所施設」です。
10ほどの建造物が広い範囲に分散し、多くは道筋もはっきりしない山中にあります。立ち入るには、もちろん管理会社の許可をいただくことが必要ですが、そのほかにも気をつけなければいけないことがあります。
たとえば、山中で熊に襲われた時とか、道に迷った時にはどうするのか。また自分の体力は大丈夫か。管理会社に迷惑がかからないように、さらには自分の身の安全をどう確保するのか。
まず単独での撮影は無理です。しかし、このような撮影に同行を頼めるような知人はいません。
一方、山中の撮影はあきらめて、アプローチのしやすい所だけに絞るのは、この文化財の価値を正しくとらえるという点でまるで満足できません。
この施設を作った先人の苦労をできるだけ残さず表現したいのです。
管理会社の担当の方に相談はしていて、随分親切に教えていただいたのですが、最終的にはあきらめたのです。
茨城県内の重要文化財の建築で、残ったもののなかで、この一件はかなり重要で、これをまともに取り上げなければ何にもならない、という思いでした。
この挫折感から、写真に対する情熱が冷めてしまい、前回使った主なカメラとレンズは、仕事で写真を撮る必要がある娘にやることにしました。
その後は、主にスマホでときどき写真を撮るくらいでした。
今回、カメラ選びを始めたきっかけは、判然としません。
最近、新しくミラーレスカメラが各メーカーから出そろい、特にニコンとキャノンという老舗が全面的に参入してきたことが大きかったのかもしれません。
実は今まで使っていたカメラは、すでに70代になったわたしの身には重いのです。ミラーレス機なら軽くできそうです。
あるいは、長いブランクを経て、また写真を撮りたいという気持ちが次第に強くなってきたのかも知れません。
実はこのブランクの間、天体写真を始めていて、望遠鏡、架台、CMOSカメラ、その他、細々とした多くの機材を購入して、月面や流星群、星夜写真などを取り始めました、
この分野はいろいろとノウハウが必要で、少しずつ慣れていこうと思っていたのですが、一つの大きな問題にぶち当たりました。
周辺の環境です。防犯灯、隣家が大きな問題になりました。実はこれは天体写真を撮る人にとって共通の問題です。
防犯灯については、我が家の斜め前にひとつあり、さらに少し距離を置いていくつかあります。今までは、我が家は、防犯灯がすぐ近くにあるので、夜間の防犯という点では安心できる、と思っていたのですが、天体写真には大敵です。昔は蛍光灯で、ある程度スペクトルが限られていて、それを除くフィルターも使えたのですが、最近はLED化が進みました。LED照明はスペクトルが広がっていて、フィルターでその光だけを除くということができないのです。
もう一つは隣家の存在です。庭またはベランダから見ることができる空がかなり制限されることと、隣家が遅くまであかりがついていることが多く、望遠鏡を空に向けることがはばかれるのです。
このことも天体写真をやる人には共通の問題で、ネットを見ると、今までベランダで天体写真を撮っていた人が隣家の問題でやめざるを得なくなったと記事にしていました。天体望遠鏡は中古品として売ることができたが、ベランダに作った撮影のための機材はその場所に特有のもので、数十万円が無駄になったと嘆いていました。
わたしの場合も、天体写真を始めてはみたが、どう考えても続けていくには制限が大きく、当初考えていたことはかなり限定されることが必至と思いました。
このようにして、やはり普通の写真を撮りたい、という気持ちが強くなったのだと思います。
写真関係の雑誌やネットからの情報によると、まずセンサーサイズが問題になりそうです。
フルサイズかAPS-Cか、という問題です
直前に使っていたカメラがフルサイズのニコン D600だったので、フルサイズが一番良いのですが、おしなべて価格が高いのです。年金生活の立場上、価格には大きな制約があります。
では予算は、というと、まず10万円は出すようだろうと思い、また今まで使っていてたレンズ、カメラを処分して得たお金が6万5千円ありました。そこでとりあえず、最初にボディと標準ズームを合わせて16万5千円と言うのを目安にしました。
それで、いろいろと見てみると、フルサイズは無理と言うことになりました。
もっとも、APS-Cでもそれほどは選択肢は広くなかったのでした。
キヤノン EOS R10
ニコン Z fc, Z50
ソニー α6400
実はこのとき、もう一つのことを考えていました。天体写真のリモート撮影です。
すでに、天体写真を始めたことに触れましたが、思った以上によく撮れたと感じたのが三つありました。月面、流星群、タイムラプスにより星空が動いていく様子の撮影です。
月面は天体望遠鏡にアダプターを介して取り付ければ、月面自体が明るいので、カメラの問題としては解像度くらいで、それほど問題はありません。解像度にしても、少なくともわたしが始めようとしている初心者向きの撮影の場合には、それほどシビアなことが要求されるものではありません。
残りの流星群とタイムラプスでは、数時間の撮影時間になり、特に寒い冬空のことを考えると、撮影機材はベランダに置き、いろいろなセッティングを室内でやって、あとは数時間"ほったらかし"にして撮影するということを考えていました。
ですから、リモート撮影を必要条件にしていたのです。
この点では、キヤノンは初心者用機種から高級機種まで幅広くサポートするソフトが以前から無料で提供されていて、もっとも確実でした。
ソニーでは中級クラス以上に限定して専用ソフトが無料でと提供されていて、上記のα6400はぎりぎりサポート対象になっていました。
ニコンでは、長い間有償のソフトがありましたが、機能や使い勝手などで評判は決して良いものではありませんでした。しかし最近、無料のソフトがリリースされ、これはよさそうでしたが、わたしにとっては一つ大きな問題がありました。
ピント合わせがリモートではできないのです。カメラの所に行って、レンズのピントリングを操作しなければいけません。キヤノンでもソニーでもリモートでピント合わせができます。
このリモート撮影機能では、富士フイルムの機種も対象から外れました。富士フイルムの機種ではリモート撮影ソフトは"いろいろ"と用意されています。これが問題で、この機種はこのソフトを使う、ということがかなり混乱しているように感じました。
一つの思想の元に用意されたのではなく、その都度、今度はこれを使おう、という、行き当たりばったり的な印象をうけました。
このような状態では、現在使いにくいだけではなく、サポートがいつ打ち切られるか心配になります。この点が、上記の3社に富士フイルムの機種が入り込めなかった理由です。
上記したキヤノン、ニコン、ソニーの各機種を比較すると、どれにも大きな弱点があることがはっきりしました。
キヤノンは、一般的な評判は最も良いものでした。特にオートフォーカスが優れているといわれていましたが、人物を主体に撮るならオートフォーカスは重要ですが、わたしは人物はほとんど撮りません。天体写真に至ってはほとんどの場合マニュアルフォーカスです。オートフォーカスの強みが発揮できないのです。
次に、標準ズームに弱みがあります。
最近まで使っていたフルサイズのニコン D600では、24~105mmのズームレンズを常用レンズとしていて、非常に使いよいと感じていました。
キヤノンでは標準ズームとして18~45mmか18~150mmになり、広角端がフルサイズ換算で約29mmになります。これは物足りません。キヤノンの別のシリーズでは広角端が15mmのズームレンズが用意されていて、これはフルサイズ換算で24mmとなり、都合が良かったのですが、なぜか新しいミラーレス機のシリーズでは18mmスタートなのです。
標準ズーム以外でも、レンズ展開が遅れています。どうもターゲットをフルサイズ機にしているようで、APS-C用のコンパクトなレンズが少ないのです。キヤノンはサードパーティのレンズメーカーに対して、このミラーレス機のマウントに合わせたレンズ開発を禁止しているそうで、キヤノン自体はAPS-C用のレンズは力を入れていないので、今後の見通しも暗いと考えてしまいます。
次にニコンですが、フルサイズ換算で24mmスタートの標準ズームレンズがあり、しかも性能が高く評価されていて、この点は良いのですが、問題があります。
Z fcはボディのデザインが特殊で、カメラを握るグリップがありません。そのようにデザインにおける特徴付けがなされた機種なので仕方がありませんが、日常での撮影では、ボディの保持は大きな問題で、グリップはあった方が絶対に良いです。
一方、Z50はグリップがあり、この点はいいのですが、背面液晶モニターがティルトタイプです。Z fcはフリーアングルタイプでした。実はソニーの上記の機種でもティルトタイプです。これは好みがあり、ティルトタイプであることが良い、という人も多いです。
わたしはティルトタイプのカメラを使ったことがあり、そのときの問題点は、縦位置で使いにくいことと、明るい室外では背面モニターが見にくいという問題があり、この点ではフリーアングルタイプの方が有利です。わたし個人としてはフリーアングルタイプの方が良いと思っています。
特に天体写真では、構図としては縦、横、斜めなどなんでもありなので、フリーアングルのほうが便利です。
また、ニコンではすでに触れましたが、リモート撮影でのピント合わせができません。
天体写真ではピント合わせは非常に重要で、長時間撮影の場合、気温の変化でピント位置がずれる心配もあります。あるいは一度きちんとピント合わせをしても、撮影の途中でピント合わせは大丈夫かと不安なり、確認したくなるのです。このようなときにリモートでピント合わせができないのは大きな弱点です。
ニコンの場合、わたしにとって、ある意味で最大の問題点は、レンズの取り付け方です。レンズを左に回して取り付けるのです。他の機種ではほとんど全てが取り付けは右回しです。
この世の中で、回転して締め付ける場合、ほとんどが右回転です。基本は右ねじということです。
このレンズ取り付けの回転方向がいままでどうしてもなじめませんでした。ニコンの D40、D5100、D600と、15年以上にわたって使い続けてきましたが、結局は慣れませんでした。次回はニコンから離れたい、という願望があったのは事実です。
ソニー α6400は、標準ズームレンズはフルサイズ換算24mmスタートの物が用意されています。わたしは別のソニーのミラーレス機でこれと同じレンズを使っていました。
このレンズは日常でのちょっとした撮影には便利ですが、とりたてて良いところがありません。きちんと何かを撮影したいという場合には別のレンズを使おうと思います。その点では、良い標準ズームレンズがないといっても良いのではないかと思います。
フルサイズ換算24mmスタートの別のズームレンズがあり、カール・ツァイス製で高級タイプという位置づけです。しかし、意外に評価は高くはありません。約10年前に発売開始された、やや古いレンズです。
上で触れたように、この機種も背面液晶モニターがティルトタイプです。
結局、どれも選択するには至りませんでした。
このような調査・比較をしていて一つ分かったことがあります。
カメラメーカーが力を入れているのはフルサイズカメラだということです。
フルサイズカメラなら、わたしの要求を満足するカメラはいくつかあるのです。問題は第一に価格、第二に重量です。
フルサイズにすると、カメラ・ボディの価格がグンと跳ね上がります。年金生活のわたしには厳しいです。
さらに、重量ですが、ボディだけならAPS-Cのカメラとそれほどは違いません。これはミラーレスカメラになって大きく改善したことです。
しかし、レンズが重いので、結局、全体としては重くなってしまいます。
ネットの記事を見ても、たとえば「70代になって、重いカメラを振り回すのが苦痛になった」という言葉で、カメラシステムを変えたというような記事をあちこちで見ました。
カメラメーカーの立場で言えば、カメラ市場は以前よりかなり小さくなっているので、少ない台数でも相当の利益が出る、価格の高いフルサイズカメラに向かうのでしょう。その結果、フルサイズカメラはいろいろと特徴のあるカメラが揃っている一方、APS-Cなどの小さいサイズのカメラは製品展開が少なく、満足できるカメラがない、という状態なのだと思います。
このように、カメラの選択が暗礁に乗り上げたような状態の時に、不意にフォーサーズという選択肢が出てきました。
フォーサーズというのはセンサーサイズが対角線の長さで、4・1/3(インチ)であるカメラです。
水平方向のサイズで言うと、フルサイズは36mm、APS-Cではその1/1.5(キヤノンは1/1.6)、フォーサーズではフルサイズの1/2です。
センサーの面積で言うと、概算ですが、フルサイズに対し、APS-Cは44%(キヤノンは39%)、フォーサーズは25%です。
フルサイズに対してAPS-Cはかなり小さいため、さらに小さなフォーサーズは考えていなかったのですが、ネットの記事では、良い評価が結構沢山あるのです。
フルサイズからフォーサーズに乗り換えたというプロ写真家もいます。
フォーサーズは暗所に弱い、ぼけが小さい、というのが大方の評価ですが、逆に言うとそれ以外は問題無い、ということかもしれません。
メーカーはパナソニックとオリンパスです。
すでに取り上げたAPS-Cの各機種に対抗できる機種は、パナソニックではDC-G9、オリンバスではOM-D E-M1 IIIになりそうでした。
オリンバスでは、オリンパスの事業の一部が独立してOMデジタルソリューションズという企業ができ、そこからの新しいシリーズ展開としてOM-1が発表されました。これは価格としてはフルサイズに近いので、一つ前の機種であるE-M1 Ⅲを候補にしました。2020年2月発売開始ですから、それでも比較的新しいものです。
この2機種ですが、マウントが共通なので、どちらのメーカーのレンズでもおおむね使うことができます。サードパーティーのレンズも少しですがあります。両メーカーともにいろいろなレンズを作っており、レンズ選びには苦労しません。
標準ズームとして、パナソニックからはライカのブランドで12-60mmズームが定評ある、代表的なレンズです。フルサイズ換算で24~120mmという、実に使いやすい範囲をカバーしており、画質も評価の高い物です。オリンパスからは、12-100mmという、これまた高評価のズームレンズがあります。ちょっと高めですが、プロ用にも十分使えると評価されています。
そのほか、レンズは取りそろえが充実してします。
これらのフォーサーズカメラにも弱点があり、パナソニックでは重いことが気がかりです。他社のフルサイズのミラーレスカメラに近い重さなのです。レンズ3本を合わせた場合ではフルサイズよりはずっと軽いですが、ボディと標準ズームの組み合わせでは比較的重めで、「気軽には持ち出せない」とか、「体力でカバーする気持ちが必要」などのコメントを目にしました。
オリンパス機では、新しいシリーズが出たために、上記のE-M1 Ⅲは旧モデルになり、中古品を買うことになります。その場合の問題点は長期保証がつかないことです。このフォーサーズ機はレンズを含めてですが、故障時の修理費が高いことが話題になっています。新品なら5年まで保証を延長できるのですが、中古では六か月保証で、この点が気がかりです。
実は、あるカメラ店で、展示品のE-M1 Ⅲの特売があり、中古価格で、保証期間は新品と同じ5年という、かなり魅力的なものが見つかりました。展示品のため、酷使した物でないことは予想がつきます。
この頃のカメラは、最近の傾向の半導体不足の影響で、納期が一か月とか二か月などの例が多く、即納というのは大きな魅力でした。ただし、付属のレンズは画質の評価が高いものでしたが、明るさ優先のもので重いのです。
上記したように、わたしは明るいレンズでボケの効果を利用するような写真はほとんど撮らないので、明るいレンズはそれほどメリットがないのです。
もう一つの懸念は、オリンパスのカメラの傾向として、画像のメリハリを強調した絵作りということが指摘されていました。ネット上のコメントでもそのような指摘があり、また新しいシリーズのOM-1の評価で、このようなメリハリを強調する絵作りがなくなった、という評価があったことからも、画像をいかにも"いじった"という傾向があることも懸念材料でした。
APS-C機がいずれも見送りせざるを得ない状態で、この展示品のE-M1 Ⅲと、パナソニックのDC-G9は購入を決心する直前まで行きましたが、ギリギリのところで踏みとどまりました。フォーサーズサイズという初めてのサイズのセンサーに不安感を消し去ることができなかったのです。
APS-Cもだめ、フォーサーズもだめとなり、フルサイズ機は高くて重い、という問題がありながらも、もう一度検討することにしました。
実は、標準ズームだけを考えると、想定していた予算をちょっとオーバーすれば買えないこともありません。
どの機種もだめなので、一つくらいの問題点は目をつぶるしかない、と考えると、フルサイズ機も候補に挙げることはできます。
一番最近使っていたのは、まさにフルサイズ機なので、どのような写り方をするか、ということは見当がつきます。
しかし、重さに目をつぶるとしても、2本目、3本目のレンズとなると、重さと価格が問題になり、やはり断念となりました。
一つの欠点くらいは目をつぶる、という考えでいかないとだめなのではないか、と考え、改めてもう一回見直すと、キヤノンのR10が再浮上してきました。
これは適当なレンズがない、ということが最大の問題でしたが、アダプターを使うと、古いEFレンズが自動絞り、オートフォーカスまで含めて使うことができます。EFレンズなら中古品は沢山あります。
標準ズームレンズとして、18-150mmがあります。フルサイズ換算で29mm-240mmになります。
このとき思い出したのは、昔使っていたアサヒペンタックス6x7という、中判の一眼レフカメラです。
このカメラは、就職して初めてもらったボーナスで買った物で、ずっと後のことですが、初めての個展をこのカメラで撮った作品だけで行ったという、思い出深いカメラです。
レンズは、55mm、105mm、200mmの3本でした。フルサイズ換算ではおおむね、28mm、50mm、100mmになります。
この3本で、「もう少し広角があれば」、とか、「もう少し望遠があれば」などと感じたことは、もちろんありますが、それほど不足するという感じはなかったのです。
もとより、この3本しかないのですから、この範囲で使うほかはないのですが、そんなに困った、という印象はありませんでした。
上記の18-150mmレンズでは、この28, 50, 100mmをほぼカバーしていることになります。具体的には、広角側はほんのわずかに不足し、望遠側は大きく上回ります。
キヤノン R10ではマウントアダプターも低価格なので、レンズが不足する問題はアダプターをつけてEFシリーズという旧型レンズを使うことで、言わば"手を打つ"ということかなあ、と考えていたところ、近くのカメラ店に在庫が1台あるという答えが来ました。
通常は一ヶ月半の納期で、たまたま店に在庫があったのです。セットのレンズも18-150mmレンズという希望していた物でした。
という事で、二ヶ月もの間、ああでもない、こうでもない、と迷い続けていたのですが、たまたま店に在庫があった、ということが決め手になり、ようやく購入ということになりました。