私の夢十夜―そのほかに
[2019/5/6]
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【24】私の夢十夜―そのほかに
「私の夢十夜」に載せなかったこと
夏目漱石の「夢十夜」に刺激を受けて「私の夢十夜」を書いてみましたが、あえてそれに入れなかったものがいくつかあります。
自分なりに印象的なので、ここに書き残して置くことにします。
前作では
夢ですが、実際に見た夢ですから、その意味では現実です
と書いたのですが、今回は夢か現実か判断が付かないものもあります。
1. 飛行機の翼の上のこびと
2. エスキモーの老婆
3. 天女の舞
4. どんどん落ちていく
第一夜 飛行機の翼の上の小人(こびと)
このような夢を見た(様な気がする)。
私はジェット機に乗っています。
窓の外にはちょうど主翼が見える位置の座席です。
時々雲の中を飛行しているようで、霧が流れては消えていきます。
そんななか、窓の外を見ると主翼のフラップの近くになにか動くものがありました。
まさか鳥などはいるはずがないだろうと思って目をこらしました。
どうも人間のような形をしていて、しきりに腕を振り上げては降ろしているように見えます。
手に何か持っているようです。金属が光っているように見えます。
腕の動きからすると、"つるはし"を振り回しているように見えました。
でもとても小さい。小人(こびと)が、大人の親指くらいの小人が、ミニチュアサイズのつるはしを振るっている。
まるで、主翼のフラップを壊そうとしているかのよう。
ジェット機は高度の高い所を飛行しているのだから、主翼にはとても速い空気の流れがあって、飛ばされてしまうはずですが、その小人(こびと)の姿は安定しています。
小人(こびと)は一心不乱につるはしを振るっています。
このままではジェット機は墜落してしまう。これは大変だ。
これはたった1回の記憶です。
この話を載せなかったのは、次の二つの理由からです。
一つはストーリー展開がほとんどないこと。「これは大変だ」と思ってから、その後の記憶がありません。
もう一つの理由は、飛行機の主翼の上に人間がいる、というシーンがアメリカのテレビドラマにあって、それを見ているからです。
実は、このテレビ番組のことは分かっていましたが、番組名は記憶になく、ネット検索して見つけました。
トワイライトゾーンの第3話に出てくる"Twilight Zone Nightmare at 20,000 Feet"です。
1分38秒という断片ですが、主翼の上にいるのは大人の男に見えます。また単に突っ立っているだけで、つるはしを振るうというような動作はしていません。
それで私の"小人(こびと)がつるはしを振るう"というものとはかなり違っています。
でも、このドラマを大昔ですが、見た記憶があるので、"小人(こびと)がつるはしを振るう"という夢はこのテレビドラマの影響を受けている、もっというとこのテレビドラマと混同している、という可能性を考えてしまうのです。
このテレビドラマの記憶も実は大変あいまいで、ドラマ自体を見たのか、あるいは何かの話の中でそのシーンが紹介されたのか、というようなこともはっきりしません。
というわけで、「私の夢十夜」からは落選しました。
第二夜 エスキモーの老婆
寝室で寝ていて、ふと目が覚めました
部屋の明かりは消えています。かすかに光があるのは近くの防犯灯の光が高窓の障子を照らしているのか。
人の気配がします。押し入れの戸の前にエスキモーの老婆が、50cm位浮き上がったところにぼんやりと見えました。
無表情です。
という内容です。
ストーリー展開は全くありません。
老婆と思ったのはその顔からでしょう。
ではなぜエスキモーと思ったのか。衣装です。カラフルなパッチワークの様な身なりでした。
この時以来、寝るときは保安球をつける習慣が付きました。
この経験はたった1回だけです。それは保安球をつけることで現れなくなったのか、よく分かりません。
でも、これは強い印象があり、はっきりと憶えています。たとえばそのときの老婆の視線(まっすぐ前を見ている)とか、表情(まったくの無表情)とか、姿勢(緊張はしていないが背をまっすぐにしている)とか、今でも思い出せます。
第三夜 天女の舞
20歳前後のことです。一人で奥日光の山を縦走しました。
一人で4泊5日という長い日程をたてました、
山好きな人なら見当がつくでしょうが、奥日光の湯元から前白根山を通り、ふもとの弥陀が池にある避難小屋に1泊、翌日は奥白根山を経由して、金精峠に出て、それから男体山、女峰山を通り、日光市街に出る、というコースです。
避難小屋とは、屋根と壁で雨風を防ぐことができ、通常小屋番はいない、従って、寝具や食事のサービスがない施設です。
ふつうは2~3泊、健脚の人なら1~2泊でしょう。私は体力に自信がないこと、また写真を撮る、ということが目的だ、ということで4泊と考えました。
それで、初日、弥陀が池にある避難小屋にとまりました。ほかには誰もいないだろうと思っていましたが、もう一人、単同行の人と一緒になりました。
その晩、シュラフに潜って眠ろうとしたのですが、なかなか寝付けません。
シュラフの中で懐中電灯をつけて腕時計をみと時間を確認する、ということを繰り返すことになりました。
そんななか、どうも天井付近で白いものがちらちらします。
とてもぼんやりしたものが動いて見えます。
煙突があったのか、屋根に隙間があったのかわかりませんが、どこか外部から月の光がもれているのかとも思いました。
見え方はまるで天女の羽衣がひらひらと舞っているかのようでした、
「目の錯覚だ」と思い込もうとしてみても、やはり何かが動いているように見えます。
だのこれだけですが、どういうわけか何度も思い出します。
夢を見たのか、目の錯覚なのか、いまでも分かりません。
第四夜 どんどん落ちていく
どこか高い所から落ちていきます。
最初は「あっ、落ちてしまった」と不安になるのですが、少しずつ落ち着き、「ああ、落ちるというのはこういうことか」などと考えたりします。
どこまでも落ち続けます。どんどんどんどん落ち続けます。
それだけなのです、
いままで書いてきたものが1回だけのものでしたがこの種の夢は繰り返して見ます。
落ちる場所としては、「とても高いところから落ちる」というのと、「地面から深い穴の中に落ちる」、というバリエーションもあります。
夢か、見間違いか
第四夜は確かに夢です。
第二夜と第三夜ですが、第二夜は夢で、第三夜は見間違いの可能性が高いと感じます。
夢は繰り返すことが多い、ということはよく聞き、また経験していますが、第二夜は一回限りです。
ですが、見間違いにしては、老婆の姿が実にリアルなんです。顔、服装、姿勢などがはっきりしているのです。
第三夜も繰り返すことはありませんでした。ただし、たとえば月が出ていたなら、その光が避難小屋のどこか隙間から差し込んで、かすかな光が見えた可能性があります。
人間の目のはたらきとして、はっきり見えないものに対しても、なんとか想像して具体的な○○というものである、と推測する作用があります。
どうも私はその推測する力が強く、妄想といえるレベルまで進んでしまう傾向があるように自分でも感じます。
おそらくは月の光か何かでかすかな光が見えて、行きすぎた想像をしてしまったのではないでしょうか。
第一夜は、これも繰り返して見たことありません。
純然たる夢か、あるいは何かの夢とテレビで見たシーンとが混じり合って、あのようなイメージを抱いてしまったか。
小人というと、「白雪姫と七人の小人」を思い出します。「七人の小人」の像は庭に飾るものとしてよく目にします。
「つるはしを持った七人の小人」は見た記憶がありませんが、今回ネットで探してみると、ウォルト・ディズニー社が手がけた陶器製のフィギュアのひとつにそれがありました。「七人のこびとは鉱山で宝石などを採掘して働いています」、との説明もあります。
このフィギュアとトワイライトゾーンの"Twilight Zone Nightmare at 20,000 Feet"を合わせると、「主翼の上でつるはしを振るう小人」ができあがります。
ただし、第一話はずいぶん昔のことで、そのときに「七人の小人のフィギュア」を目にした可能性はとても低いと感じます。
結局は、第一話は夢である可能性が高いが、テレビドラマの1シーンと「七人の小人のフィギュア」が合成されたもの、という可能性も否定できない、というところでしょうか。
夢の話か、あるいは夢かどうかはっきりしない、というものですから、曖昧な結果になってしまいます。