考えてみると=まじめ編=原発


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【22】日本原電の住民説明会について (2014/11/17)

住民説明会

日本原電の住民説明会が私が住む日立市でも開かれることになりました。どのようなことを言うのか興味があったので出かけることにしました。ちなみに完全予約制です。

多賀市民会館の大ホールに集まった聴衆はざっと見て200人~250人くらいでしょうか。年配の人が多いようです。全16ページの小冊子「東海第二発電所の安全対策について」とアンケート用紙が配られていました。

リスクと対策

説明は、リスクにたいしてどのような対策を立てているか、あるいは予定している対策は、などについてでした。

おおむね聞いたことのある内容なので新鮮味はありません。今回は、今まで考えなかったことまでも対策する、ということで、たとえば航空機が墜落したとき、まで考慮している、と言っています。これには、管理棟を2か所に作ってどちらかが破壊されても大丈夫なようにしており、また燃料が燃えてもその熱に耐えるように対策がたてられている(これらは対策する予定、ということだったかもしれない)、という様な話でした。

又、火山については、日光白根山が噴火するというリスクに対する検討内容などの話もありました。

本当の最大のリスク

そのような話を聞きながら、いままでぼんやりと考えてきたことが次第にはっきりしてきました。

本当の最大のリスクは日本原電の倒産ではないのか。

この説明会の中で、「当社は一株式会社であり、とることができる対策にも限界があります」という意味の発言がありました。まさにその通りです。

原子力発電の黎明期、あるいは100万KWくらいに原発が大型化する前の段階では、原子力発電のさまざまな技術分野で日本原電はパイオニアとしての役割がありました。だからこそ、原発を考えている各電力会社は資金を出して日本原電を支えたのです。

いまや、原発の技術は各電力会社に蓄えられて、日本原電の指導や経験に頼る必要がなくなり、日本原電がなくても各電力会社は原発をやっていくことができるようになりました。いまこの企業に残っている強みとは廃炉技術でしょうか。これも、原子炉の構造としていろいろあり、日本原電頼み、という状況にはならないでしょう。

過去のしがらみがあるから各電力会社は今でも資金援助していて、日本原電は発電会社でありながら発電量がゼロ、にもかかわらず企業として必要な収入を確保しています。とてもおかしなことですが。

これからはどうでしょうか。各電力会社は経営が厳しくなっています。日本原電から恩恵をうけないのだから、支援することはやめよう、と決断するのではないでしょうか。そうしないと、株主の理解が得られないでしょう。

地域に電力を供給する電力会社なら破産すると大きな影響が出ますから、電力会社は守られるでしょう。しかし、発電会社はそうではありません。

電力会社からの支援がなくなり、政府からも冷たくされるのではないでしょうか。そうなると銀行だって経営に疑問が残る日本原電に融資することも制限するようになります。日本原電は原子力発電以外に収入源はないのです。経営の多角化は今ではどの企業にとっても珍しくないことですが、日本原電はやっていません。

もちろん、すぐに一気に倒産、ということはないでしょう。先細り、という可能性です。たとえば、将来の見込みがあまりない企業だ、と見られると、就職希望者が減る。必要な人員を確保するなら、それはとりもなおさず新入社員のレベル低下であり、会社はますます落ちていく。銀行からの融資も、政府の支援も制限される。

どうなるんだろうか

日本原電が発電できなければ、本質的に収入がなくなり、資産としては巨大な負債である原発施設が残ります。これは使わないからといってほうってはおけないものです。高濃度に汚染された原子炉と発電設備(この一部はやはり汚染されています)があり、核燃料は廃炉作業を進めている東海原発のものまでも残っているのです。

政府の支援を期待するのでしょうか。要するに国民の税で一企業を守るということになります。

そうなっても、「先細り」であることには違いないでしょう。廃炉作業と高濃度汚染物質の管理を最低限の人出と予算でやっていくのでしょう。

そのような先例があるのです。

1999年9月に臨界事故をおこしたJCOです。同社のウェブサイトでは、「沿革」という記事で、「先細り」の経緯を次のように簡潔に書いています。

1999年09月転換試験棟で臨界事故発生
2000年03月加工事業許可取消し
2003年04月ウラン再転換事業の再開を断念

また、"事業の状況"という記事で、「弊社では現在、安全確保を第一にウラン廃棄物の保管管理」と「施設の維持管理」に継続して取り組んでいます」と書いています(2014/11/17事点)。親会社の住友金属鉱山株式会社のウェブサイトでは、国内グループ会社として「(株)ジェー・シー・オー」をあげ、「資本金1,000万円、従業員数34名」としています。現実には、「低濃度(企業側の説明によれば)の物質を焼却処分する」計画が出て、周辺の住民とトラブルになった事もあります。

日本原電の場合、近くの住民は、といっても半径30Km以内の100万人弱の住民ですが、不安な毎日を過ごさざるを得ません。大きな地震が起こるたびに、「東海第二原発は大丈夫か」と不安な気持ちがわきあがります。

高濃度汚染物質や核燃料をどう処分するのか、ということが宙に浮いています。それが具体化しても、東海村からなくなるまで(仮にそうなるとして)何十年もかかります。そしてそれは不安がなくなったのではなく、不安が他の場所に移った、というだけのことなのです。

日本原電が「当社は一株式会社であり、とることができる対策にも限界があります」という趣旨の発言が思い出されます。

東海第二原発の廃炉運動が起っています。私も賛成していますが、実は廃炉にしても問題は消えないのです。逆に、核燃料は運転していれば頑丈な原子炉のなかにあるからかえって安全である、という意見もあるのです。

原発は運転を続けてもやめても大きな問題がある。このことが原発の危険性、厄介なところを象徴しています。

倒産のリスクの認識

倒産のリスクを考えるのは私だけではありません。東海第二原発に関するメーリングリストに登録しているといろいろな情報が入ってきますが、その中に、ある人が同じ日の住民説明会で意見を述べたあと、アンケートを渡したときに「観念して早いうちに東電と合併して事業転換を図ったほうが得策とアドバイスもしてきました」と書いていました。私が住民説明会に出た11/3には午前と午後の2回開かれていますが、上で"述べた"とされる意見を聞いた記憶がありませんから、その人は午前の部に出たのでしょう。私が出たのは午後の部です。

私が「倒産のリスク」について発言していれば、計らずも午前、午後と続けて企業存続の危機について心配している人間がいることが分かって良かったのかもしれません。実は、以前に放射線の性質についての説明会のときに、一人で長時間質問をし続けて、他の参加者からおしかりの意見を頂き、それ以後は意見や質問はなるべく控えて、他の方の意見・質問を聞くのを優先させようと考えているのです。



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