九九にも好き嫌いがある


[2019/7/3]

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【25】九九にも好き嫌いがある

昔からかけ算九九に好き嫌いがあった

小学校で習う"かけ算九九"です。

これにも好き嫌いかあるのです。

こんな事を感じるのは私だけでしょうか。これはよく分かりません。

なんとなくすっと頭に入る、あるいは口から出てくるものと、なんとなく不安な気持ちになる、あるいはこれで良かったのかなと今ひとつすっきりしないものがあるのです、

小学生の頃から感じていた事なので、そろそろ60年にもなろうというものです。

この辺で、きちんとまとめてみようと思い立ちました。

"1"の段(1x1,1x2など)は意味がないので除外します。同様に"x1"のタイプ(2x1, 3x1など)も同様です。

従って、2x2から9x9までの64通りの九九が対象となります。

好きなものから嫌いなものまでランキング形式に並べてみました。

表1 かけ算九九の好き嫌いランキング

A 6x9=54 7x8=568x9=72
B 3x7=21 3x9=277x9=638x7=569x6=549x7=639x8=72
C 4x8=32 4x9=366x7=427x3=217x6=429x5=459x9=81
D 3x6=18 3x8=248x2=168x3=248x5=408x8=649x3=279x4=36
E 4x7=28 6x5=306x6=367x2=147x5=357x7=498x4=32
F 3x3=9 3x4=123x5=154x2=84x3=124x4=164x5=204x6=24
G 3x2=6 6x2=126x3=186x4=247x4=289x2=18
H 5x2=10 5x3=155x4=205x5=255x6=305x7=355x8=405x9=45
I 2x2=4 2x3=62x4=82x5=102x6=122x7=142x8=162x9=18
J 6x8=48
K 8x6=48

11段階もの違いがあるのか、という疑問もありますが、もともと微妙なところもあります。

だいたいは、隣り合う上下ではその差は微妙で、入れ替わりがあるでしょう。とりあえず、というところです。

分析

こういうものを分析しても何にもならないと思いますが、放っておくのもなんだか落ち着きません。

まず、2の段と5の段は単純すぎるので、好きなものではありません。つまらない、という印象です。

2の段は (2,) 4 6, 8.… という系列、5の段は (5,) 10, 15, 20,… という系列で、あまりにありふれています。

"つまらない"とした2の段と5の段の下に二つあります。

"6x8"と"8x6"です。この二つが特に嫌いです。

ではこの二つに嫌いの差があるか、というと、微妙です。5.1対4.9という差でしょうか。

では"8x6"がなぜ嫌いなのか。

"8x6"が"48"とは「小さすぎるのではないか」と直感的に感じる(違和感を感じる)、ということがその理由ではないかと思うのです。

その理由を考えてみました。

"8"も"6"も四捨五入すると 10 です。ですからかけ算すると 100 です。それが 48 とは四捨五入したら 50 にしかならないではないか、という"印象"のような気がします。

考えようによっては、"8"はほぼ 10 だ、としても、掛ける数の"6"は 5 に近いですから、 10x5=50 と概算できるので、 48 は妥当ではないか、ともいえます。

ですが、最初に 8 が来るので、結果はある程度大きな数のはず、と感じてしまうのです。

この点が"6x8"と"8x6"の違いになっているのではないか。

"6x8"では、最初に 6 が来るので、結果はそれほど大きな数でなくていい、ということです。

でも、"6x8"が低ランクなのはそれだけではなくて、最低ランクの"8x6"に引きずられているのかもしれないという感じもします。


では、上位のランクはどうでしょうか。

全般的にみて、大きな数が上位に入る、という傾向があるような気がします。

表1のA~Kの各ランクごとの平均値を出してみました。

表2 かけ算九九の値のランクごとの平均値

A 61
B 51
C 43
D 31
E 32
F 15
G 15
H 28
I 17
J 48
K 48

たしかに、上位の方が数が大きいですね。

2の段、5の段が下位にあることも影響していそうですが、それに対応する"H"と"I"のランクを除外しても、「上位の方が数が大きい」という傾向は明らかです。

これは、数が小さいと単純過ぎて面白くない、という理由はありそうです。

ためしに、 8 と 9 がふくまれる九九、つまり2x8とか9x3などというものだけを抜き出して見ます。

表3 ○x8、○x9、8x○、9x○を抜き出す

A 6x9=54 7x8=568x9=72
B 3x9=277x9=638x7=569x6=549x7=639x8=72
C 4x8=32 4x9=369x5=459x9=81
D 3x8=248x2=168x3=248x5=408x8=649x3=279x4=36
E 8x4=32
F
G 9x2=18
H 5x8=405x9=45
I 2x8=162x9=18
J 6x8=48
K 8x6=48

2の段、5の段を除くとその傾向がよりはっきりします。

そして、"8x6"と"6x8"の特異性がさらに目立ちます。

昔懐かしい計算尺のこと

ひとつ思い当たることに気づきました。

私は中学生の3年間、クラブ活動として計算尺クラブというものに入ってました。

計算尺は電卓の出現で今ではすっかり姿を消しましたが、当時はいろいろな場面で重宝されたものでした。

計算尺がどういうものかを説明する事は止めておきます。今後復活する事はないし、きちんと説明するには数学の対数(log)を持ち出さないといけないので面倒だからです。

ここで必要な情報は、計算尺とは「かけ算、割り算をする道具である」、ということと、「桁が無視される」ということです。

「桁が無視される」とは、たとえば 0.24x0.78 を計算するときと、2.4x7.8 を計算するときと、24x78を計算するときで、操作はすべて変わらない、ということです。

上の例でいえば、いずれも、2.4x7.8の計算をして、結果は18.72ではなく、1.87と出るのです。この1.87は0.187かもしれないし、18.7かも知れないのです。

ではどうするのかというと、概算で2x7=14と暗算で求めて、これに近い位取りを採用して1.87ではなく18.7とするのです。

計算結果の有効桁数はおおむね3桁です。

このように概算する事に非常に慣れていたので、"8x6"だったら、ある程度大きな数だ、と予想していたのかもしれない、と思ったのです。

そうだとすると、この記事の始めのところで、「小学生の頃から感じていた」と書いたのですが、それは「中学生のときから」ということになります。


いずれにしても、「"8x6=48"は嫌いだが"8x9=72"は好きだ」などというのは、どうみてもおかしなことですね。


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