前書き・後書きの部屋 [5] の参考資料


introduction、preface、forewardなどの実例

洋書において、introduction、preface、forewardなどがどのように書かれているかについて、手持ちの本をチェックすると、とにかくいろいろある、ということが分かった。基本原則というものはないようだ。

おおよその傾向としては、prefaceに比べてforewardが書かれることはずっと少ない。prefaceの位置は、目次の前と目次の後のどちらもあるが、どちらの場合も目次に書かれていることが多数だった。その場合、ページの表記は、prefaceから目次の部分はローマ数字(i, ii, iii, ・・・・)で、目次の次からは算用数字(1, 2, 3, ・・・・)となる。introductionがある場合には、目次の次から、Introduction, chapter 1, chapter 2のように並ぶ。

和書ではどうか。「はしがき」、「はじめに」、「前書き」などは目次の前にあり、ページの表記はローマ数字(i, ii, iii, ・・・・)、目次のページはページの表記はなく、本文が1ページから始まる、という例が多い。ただし、そうでない例も少なくない。たとえば、「はじめに」からページ表記が1から始まり、目次から本文へと、ずっと一貫したページ番号がつけられる、というものがある。その場合、目次のページにはページ番号を表記しないことが多いようだ。

以下、実例を挙げてみる

【洋書での実例】

The Concise Oxford dictionary of current English. -6th Ed.
CONTENTS(目次)
Preface (旧版(1st, 2ndの二つ)のPrefaceの引用も含む)
Introduction (ここまでがローマ数字によるページ表記)
本文 (ここからは算用数字で1から始まるページ表記)

The Times' atlas of the world
Acknowledgements (謝辞)
Contents
Foreward
いろいろな参考データ (ここまではローマ数字によるページ表記)
本文 (ここからは算用数字で1から始まるページ表記)

Dialogues of Alfred North Whitehead
CONTENTS(目次)
FOREWARD(著者以外の人物による)
INTRODUCTION(著者以外の人物による) (ここまではローマ数字によるページ表記)
本文(PROLOGUEから始まる) (ここからは算用数字で1から始まるページ表記)

Peer reviews in software
Contents
Preface (この末尾ににAcknowledgementsがある)
About the Author (ここまでがローマ数字によるページ表記)
本文 (ここからは算用数字で1から始まるページ表記)


【和書での実例】

古語大辞典 小学館
序文
凡例
この辞典を利用するために(参考情報) (ここまでが"一"から連続したページ表記)
本文(ページ表記は新しく"一"から始まる)

岩波講座 日本語 5 音韻
まえがき
目次 (ここまでがローマ数字によるページ表記)
本文(ページ表記は新しく"1"から始まる)

dojin選書 004 ヒューマンエラーを防ぐ知恵 ミスはなくなるか 化学同人
まえがき
目次
本文(ページ表記は"まえがき"から全て含んだ一貫番号)

「仕方がない」日本人をめぐって―近代日本の文学と思想― 南方新社
もくじ
まえがき
本文(ページ表記は"もくじ"から全て含んだ一貫番号)

倭名類聚抄 元和三年古活字版二十巻本 勉誠社
序 (ページ表記は"一"から始まる)
総目次 (1ページだけでページ表記なし)
影印目次(ページ表記はここから"一"から始まる一貫番号)
本文(題倭名鈔)(ここからが影印本で、ページ表記は"一"からの一貫番号がここから始まる)
本文(新刻倭名類聚鈔凡例)
本文(倭名類聚鈔序)
本文(倭名類聚鈔巻一)

これはなかなか興味ある例で、本文と書いた四つの部分が「元和三年古活字版二十巻本」の内容である。「題倭名鈔」は末尾に「羅浮散人」の名があり(林羅山の号の一つが羅浮、散人とは"遊び人"というニュアンスか)、早稲田大学図書館蔵書目録によると「元和三年本」での「序文」にあたるようだ。また「新刻倭名類聚鈔凡例」には「那波道円」の名があり、これは「元和三年本」の校訂者である。「倭名類聚鈔序」は「序終」で終っており、人名の記載はない。この書は、平安時代中期の学者源順(みなもとのしたごう)が著した物を江戸時代に「那波道円」の校訂により刊行した本を、現代において刊行したものである。つまり、江戸時代には「題倭名鈔」という、上記の"foreword 短い,簡単なまえがきのことで,しばしば著者以外の人の手による"に相当するものがあったと考えられる。江戸時代の出版の方法が欧米のやり方の影響を受けたとは考えにくいから、これは、"洋の東西を問わず"、出版物に権威者の推薦の辞というものが求められた、ということなのだろう。



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