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[2015/1/12]
相輪橖の撮影であおり(ティルト)の必要性を知る
以前に、相輪橖(そうりんとう)を撮影した事がありました。
高さが10m弱あり、高いところの側面(円筒状)には細かな文字が刻まれており、その文字を撮影したいと思いました。
高いところを見上げる撮影になり、またかなりな距離があります。大まかにいえば、5m離れた塔の高さ6~7mの所を撮影する、という様なものです。
最初にニコンD5100と55-200mmズームを使いました。35mm換算で最大300mmになります。D5100にはバリアングルモニターがあり、見上げる位置を撮影するときにも首が痛くならず、その点では楽でした。
しかし、もともとこのレンズの200mmでは解像度がそれほど高くないうえに、ピントを全面に合せることができないということが分かりました。被写界深度が不十分なのです。絞りを絞ってもまだ十分ではなく、かつ回折による画質低下で、この組み合わせでは無理と判断しました。
"あおり"が必要となります。
以前に、短い期間でしたが大判カメラを使っていたことがあり、あおりの効果は分っていました。
ティルト撮影の準備
いろいろ調べてみると、ミラーレス一眼+マウントアダプター+レンズという組み合わせで、マウントアダプターはティルト機構付きにする、という組み合わせが可能なことが分かってきました。ネットで中古カメラやレンズが安く買えます。
ティルト機構付きのマウントアダプターは国内で買うとかなり高いので、ebayを見てみると安く買えそうでした。そこで、カメラはソニーの低価格機NEX-C3、レンズはニコン AF 75-300mmをヤフオクで入手しました。レンズは三脚座があるものを条件にしました。レンズに対してボディはかなり軽いので、ボディを三脚に固定するより、レンズを固定したほうが良いからです。
ティルトする角度はどのくらいなのかがちょっと気になります。計算してみると、今回考えている撮影対象では2.5°位と分かりました。この程度ならティルト可能なマウントアダプターであれば問題なさそうです。
ティルト付きマウントアダプター(NIKON-NEXタイプ)をebayで購入しました。Kiponのものでした。カメラに取り付けてティルトさせた状態が下のようになります。
一枚目の写真は、ティルトアダプタをカメラに装着して下向きにティルトさせたところを上から見たところです。ちょっとわかりにくいですね。
二枚目の写真は、そのまま横から見たところです。レンズ取り付け部分が回転してボディと光軸がずれているのが分かります。上下にある突起は、レンズ取り付け部分をロックするためのつまみで、ここをつかんでカメラ正面から見て時計方向にまわすとロックされます。反時計方向に回すとレンズ取り付け部分はどの方向にも傾けられ、そのまま回転までしてしまいます。レンズの絞りの指標が見えにくいときには回転させて見やすい位置になるようにすることもあります。
ティルトできる角度はこのアダプターではこれが限度です。以外に少ないような気もしますが、私の場合に必要な角度はとても小さい(上に書いた通り)ので十分です。
あおり(ティルト)撮影をやってみた
2013/4/30に最初のティルト撮影をテストしていますから、このころに機材が揃ったようです。次の2枚の写真はそれから1週間ほどたって行ったテスト撮影の例です。
一枚目の写真は庭を手前からとったもので、写真の最下部から最上部までピントが合っていることが分かります。
二枚目の写真は二階のベランダからメジャーをぶら下げてその目盛を下から見上げるように撮影したもので、ティルトの効果によりメジャーの上から下までピントが合っていることがが分かります。使用したレンズは書きとめておかなかったので、いまひとつはっきりしませんが、翌日に相輪橖の撮影に出かけたときには75-300mmのズームレンズを主に300mmF8で使っていますから、この時もそのレンズで、上の二枚目の写真は75-300mmのズームレンズを300mmF8で使っていると思います。
問題点
実際に相輪塔を撮影して分かったことは、時間がかかりすぎる、ということでした。大判カメラであおりを使うよりも時間がかかります。その原因はテスト撮影の時から大体わかっていました。
必要な角度にレンズとボディを傾けて固定する、というところで次の様な問題があるためです。
(1) ティルトするときはリングを回してロックを緩め、カメラボディを傾ける(レンズを三脚に固定しているので)のですが、ほんの僅かに傾ける必要があり、これがやりにくい。ロックを緩めすぎるとあまりに自由に動きすぎて、"もう少し傾ける"という操作ができず、ロックを少し閉めると、動きにくいので力を入れることになり、一気に大きく動いてしまう。
(2) 角度が決まってロックするために力を入れてリングを回したときに、レンズの傾きまで変化してしまうことが多い。ロック用リングが固くて、かなり力を入れないと回らないのです。
(3) ボディを傾ける方向が全く自由なので、もともと"上向き"にちょっとだけ傾けたいのに、右とか左にも傾いてしまう。そのために、左右の向きの補正も同時にしなくてはならなくなってしまう。
対策
この機材・方法では効率が悪すぎます。何とか対策を考え、すこし改善できました。
したの写真がその方法です。
2枚のL型ブラケットを使います。ブラケットにボディを取り付け、そのブラケットをスペーサーを介して別のブラケットに取りつけます。要するに、カメラに長いレバーを取り付けたもので、レバーの先端を回転させ、カメラを微小な角度だけ回転させるのです。このとき、ティルトアダプターのロックは軽くかけておき、角度が決まってもそのままにします。
ある程度の改善にはなりましたが、ねじとかリングとかを回すと、回した量に応じて傾く、というティルトアダプターが欲しいところですね。
更には、シフトもできた方が良いです。
Kipon製のアダプターにシフトとティルトの両方ができるタイプがあることは知っていましたが、狭いところにシフトとティルトの両方のメカニズムを盛り込むのは技術的にむずかしいだろうな、と思い、高価格であった事もあり、あきらめました。
誰かの意見でしたが、あるシフト・ティルト両機能をもつというアダプターについて、シフトとティルトはかける方向が90度違うやり方しかない、ということが分かり、いったい誰が使うのか、と批評している記事がありました。やはり技術的に難しいのでしょうね。これではほとんどの場合、シフトかティルトどちらかのみ使用できる、というものになってしまいます。
ティルトアダプターについて
このティルトアダプターについて、使いにくい面が強調されてしまいました。
今回のように、厳密にピントを合わせるためにティルトさせる、という場合ではそうですが、反対にピントを外すためにティルトさせる場合には便利かもしれません。「ミニチュア風写真」とか「逆ティルト撮影」かとか言われるもので、ピントが合う範囲をわざと狭くして撮影するものです。風景がミニチュアを撮影したように見えます。ピントを外す、つまりボケを大きくするもので、ピントを合わせようとする場合よりはもっとラフな撮影ができるでしょう。ティルトアダプターのロックを緩め、手持ちでレンズを傾けながららシャッターを押す、という撮影なら、かえってこのように自由に傾きが変えられるものが便利なような気がします。
これに関連して液晶モニターについて
D5100はバリアングルモニターで、高いところを見上げる撮影では姿勢が楽であると書きました。ソニーNEX-C3の様なティルトモニターではどうか、というのでやってみました。モニターのティルトは上方向に"約80度"とされています(NEX-C3Kの商品情報のサイトによる)。下の写真のような感じです。被写体がかなり高いところにある場合でも、それほど苦労しないでモニターを見ることができます。もちろんニコンD5100の様なバリアングルモニターの方がいいですが。
なお、今回のようなマニュアルフォーカスを厳密に行う必要がある撮影では、NEX-C3の次の二つの機能は大変便利でした。
(1) ピーキングMF機能・・・・ピントが合っている個所をハイライト表示する
(2) MFアシスト機能・・・・モニター表示倍率をワンタッチで7.5倍/15倍に切り替える