考えてみると=まじめ編=原発
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【16】日立市で東海第二原発からの距離を標示 (2013/8/27)
日立市での最近の動き
日立市では、次の様な災害標示板(仮称)をあちこちに設置しています。
市役所に問い合わせると、正式名称は特にない、とのことでした。正確には、"災害危険度標示板"とか
"災害ポテンシャル標示板"とでもいうべきところですが長すぎます。したがって以下では"災害標示板"と呼ぶことにします。
拡大すると、次のような内容です。
ここで、「東海第二発電所」と称しているが、これはおかしい。
その施設の正式名称は、"日本原子力発電株式会社東海第二発電所"です。
これを短縮するなら、"東海第二原発"は正式名称を反映していますが、"東海第二発電所"では正式名称を反映していません。
"日本原電東海第二発電所"というなら構いませんが。
なぜ二種類か
あるところには標高のみが標示され、またあるところには標高と東海第二原発からの距離の二つが標示されています。
市役所の担当者に電話で問い合わせても、明確な回答は得られませんでした。
観察してみると、東海第二原発からの距離で区別しているのではないようです。
どうも、体育館の様な広い避難用のスペースがあるところには2枚構成で、東海第二原発からの距離も標示されているような印象を受けます。
つまり、避難所になる可能性があるところは2枚構成にして、その他は1枚構成、という事ではないでしょうか。
標高というのは、もちろん津波を想定しています。
津波であれば、波が引いてひとまずは安心、となった後は、自宅に戻って状況を確認する、ということになるでしょう。
原発で事故が起こると、まるで違います。
大事故であれば、さらに遠くに避難する必要があります。
避難所にいつまでもいるわけにはいかないのです。
つまり、原発からの距離によって、避難者のとるべき行動が違ってくる、というわけで、
原発からの距離を標示している、という想像です。
東海第二原発に一番近いところはどこ
学校であれば、災害標示板は必ずと言っていいほどありそうです。
ただし公営高校は県立なので、市のコントロールが届かないかもしれません。とりあえず小中学校を考えました。
日立市で、東海第二原発に一番近いところは、日立市の南端の久慈川に近いところです。
東海第二原発は海岸にありますから、地図で久慈川河口に近い小中学校を探してみると、東小沢小学校と久慈小学校のようでした。
まず、東小沢小学校です。
水田に囲まれた平地で、周囲は標高は数mという状況です。
校門横に、予想通りに2枚構成の災害標示板がありました。
海抜5m、東海第二原発から3.9Km。
うーん、と唸ってしまいました。
まず、周囲に高いところがありません。しかも、周囲の道路はクルマがすれ違えないような細いものです。
津波の時に"どこに"逃げればいいのか。
さらに、原発事故の時には、"どうやって"逃げればいいのか。
以前に、この小学校で避難訓練が行われた、というニュース(放送か新聞かは分からず)があったことを思い出しました。
ネットで探すと、ありました。その学校のサイトに写真付きで紹介されています。
「23分かかって、常磐自動車道のインターチェンジの事務所駐車場まで移動した」とのこと。
なるほど、インターチェンジ付近までくれば、国道6号もあり、北に逃げるか、西に逃げるか、手はありますね。
日立市はほとんどの地域で、山が海岸近くまで迫っているために、海岸に沿った南北方向の細長いところに人口が集中しています。
従って日立市民が避難するには、南方向の東海第二原発を避けて、北方向に避難することになりそうです。
常磐自動車道と国道6号、245号が南北に走っていますが、海岸に近い国道245号は、津波が来た場合では避難には使えなさそうです。
従って、国道6号を使うか、常磐自動車道を使うか、ということになりそうです。この地区では、山並みが途絶えたところであり、西の常陸太田市方面に逃げるルートも使える可能性があり、
その点では選択肢が一つ多くて有利かな、などと考えてしまいました。
東海第二原発で大事故が発生する確率はとても低いということは理解しています。
しかし、最悪のケースを考えておくことは絶対に必要です。
事実、福島第一原発では、その最悪のケースが起こってしまったのですから。
東海第二原発で大事故が発生しない事を祈るばかりです。そのためには、
再稼働せず、速やかに廃炉にしなければなりません。
東海第二原発に一番近いところはどこ-その2
実は、東海第二原発にもっと近いところに、別の小学校があります。
児童数の少ない、私立の小学校です。
そちらにも行ってみましたが、ここで取り上げている災害標示板は見つかりませんでした。
市が指定した避難所にはなっていないのでしょう。
さらに、もうひとつ、久慈小学校が、東海第二原発からの距離という点では上記の東小沢小学校と同じくらいです。
出かけてみると、海岸からは随分近いのですが、約30mくらいの高台にあります。
そのせいかどうかは分りませんが、災害標示板は校門の近くには見当たりませんでした。
まあここなら、津波でも避難する必要はなさそうです。
なお、日立市立のこの二つの小学校のインターネットのサイトを見たのですが、メインとなるページには次の1行がありました。
「本校の維持運営にあたり電源立地地域対策交付金を活用しています。」
原発の危険性と引き換えにお金をもらって、学校の維持運営に使っている、ということですね。
県立高校はどうか?
市立としては小中学校だけで、公営の高校は県立になります。
日立市が設置する災害標示板はどうなっているのでしょうか。
東海第二原発に一番近い県立高校に行ってきました。
こちらは2枚構成の災害標示板がしっかりと設置されていました。
つまり県立高校にも日立市は災害標示板を設置しているのですね。
そのほかの注目される災害標示板
下の写真は海抜0mです。
海岸に近いところで、一段と低くなったところは海抜0mがあるのですね。
もしかすると、-1mという様なところがあるのかもしれません。
一般に海岸に近い道路では、海抜2mとか3mとかは珍しくはありません。
また、標高が低い地域では、このような標高の表示が短い間隔で見られます。
では、高いところではどのような表示なのでしょうか。
津波の心配がないことはあきらか、という場合、標高の表示はないのでしょうか。
下の写真は、海岸からだいぶ離れた高台の小学校です。
海抜84mにもなれば津波の文字はありません。標高の表示はどのような意味があるのでしょうか。
結局のところ、災害標示板における東海第二原発からの距離標示とは?
本サイトのこのシリーズで、以前に、
日立市議会が東海第二原発の「再稼動反対・廃炉」に関する請願、陳情6件をすべて不採択にしたこと
について取り上げました。
私が想像をたくましくすると、"東海第二原発からの距離標示"とは、日立市議会ができなかったことに対して、
日立市、つまり市役所が"精一杯の行動を起した"のではないか、ということになります。
日立製作所の原子力部門の本拠地がある日立市で、原発に異議を唱えるにはいろいろな支障があるのでしょう。
市議会は、「再稼動反対・廃炉」に関する6件の請願、陳情をつぶし、ようやく、議員提案の「議案」として、
"「再稼動」のための条件を宣言する"、という内容のものを議決しました。
「第一の矢」はあまりにもつつましいものでした。しかし、とにかく「矢」は放たれたのです。
「第二の矢」が市役所から放たれました。
日立市民は、東海原発からこんなに近いところに住んでいるんだぞ、と、明言したのです。
これまた"つつましい"行動ですが、東海第二原発が危険なものである、と認定した点で前進と言えるでしょう。
大きな災害として特別に気をつけなければならないのは、日立市では「津波」と「原発事故」である、
と認定したのですね。
この災害標示板について、あまり取り上げられることはありません。
ネット上でもほとんど検索に引っ掛かりません。
でも、日立市以外にこのように、東海第二原発からの距離を明示しているところはあるでしょうか。
いままで、東海村の周囲の市町村では見たことがありません。
せっかくの距離標示なのです。
福島第一原発の事例と照らし合わせて、万一原発事故が発生したときに、
自宅はどうなるのか、知人はどうなるのか、
どのようなルートでどのようにして避難すべきなのか、
について思いをはせてほしい、と思います。
最後に
まず、"災害標示板"という言葉は正式な名称ではありません。私が仮に付けた名前です。
また、このページでは、写真などに基づく事実の報告と、個人的な想像と、個人的な意見とが入り混じっています。
この二つの点にご注意頂きますようお願いいたします。