考えてみると=まじめ編=原発


[次に進む]   [ひとつ前に戻る]   [考えてみると=まじめの巻=のトップに進む]   [ホームに戻る]


【12】日本原電の二枚舌・政府への報告書と県民へのチラシ (2012/9/12)

日本原電の新聞おり込みチラシ

2012年9月9日、日本原電からの「げんでん東海」という折込みチラシが朝日新聞と一緒にありました。

東海第二発電所の安全性に関する総合評価(ストレステスト)の結果について

このようなタイトルです。

8月31日に日本原電が、いわゆるストレステストの結果報告書を原子力安全・保安院に提出しました。その内容についてのお知らせだそうです。

すでに私は、その報告書のコピーをダウンロードして、大まかな内容は分っていましたので、日本原電が茨城県の300万県民にどのような内容を伝えるのだろうかと、興味がありました。


どうだったか。


激しい憤りを覚えました。


まず最初に大きな文字でこうあります。

    東海第二発電所は安全性に十分余裕があることを確認

評価の結果、東海第二発電所の安全上重要な施設・機器等は、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、これまでに実施した安全対策の強化によって設計上の想定を超える事象(地震、津波等)に対する安全裕度を十分に有していることを確認しました。

そのあとに、「安全裕度評価結果の概要」というタイトルで説明が続きます。


ここで、何がいけないのか。

ストレステストというものは、事故が起こる限界を明らかにすることです。安全裕度が十分かどうかを検証するものではないのです。

安全裕度が十分かどうか、つまり安全といえるのかどうかは、原発企業が口を出すことではありません。安全・保安院が判断することなのです。

ところが、日本原電は安全・保安院を差し置いて、「安全である」、と宣言しているのです。

「東海原発の安全性について、安全・保安院なんかに口出しされてたまるか」という意識が出ているのでしょうか。

ストレステスト結果報告書の具体例

なお、このような書きぶりは他のいくつかの原発企業の報告書にも見られます。日本原電・東海第二発電所の事例もあわせて紹介します。

四国電力・伊方発電所第2号機
当社としては、これらの評価を実施した結果、伊方発電所第2号機の安全上重要な施設・機器等が十分な安全裕度を有していることを示すことができたものと考えている。(報告書:・・・・伊方発電所第2号機の安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について (四国電力株式会社) P. 5-5)
関西電力・大飯発電所3号機
以上のように、地震、津波、全交流電源喪失、最終ヒートシンク喪失等の各項目について評価した結果、若狭地域に想定を超える地震や津波が発生した場合においても、大飯発電所3 号機において緊急安全対策として実施した諸対策により安全性が確保されることを確認すると共に、それらの有効性についても定量的に評価することができたものと考えている。 (報告書:・・・・大飯発電所3号機の安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について(報告) 関西電力株式会社) P. 118)
九州電力・玄海原子力発電所1号機
以上のように、地震、津波、全交流電源喪失、最終ヒートシンク喪失等の各項目について評価した結果、発電所周辺地域に想定を超える地震や津波が発生した場合においても、玄海原子力発電所1号機において緊急安全対策として実施した諸対策により安全性が確保されることを確認するとともに、それらの有効性についても定量的に評価することができたものと考えている。(報告書:・・・・玄海原子力発電所1号機の安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について(報告) 九州電力株式会社) P. 118)
日本原電・東海第二発電所
以上を踏まえて,当社としては,今回の評価を実施した結果,東海第二発電所の安全上重要な施設,機器等が十分な安全裕度を有していることを確認できたものと考える。 (報告書:・・・・東海第二発電所の安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について(報告)日本原電株式会社) P.6-3)

「十分な安全裕度を有している」、「安全性が確保される」、等々、政府機関なんかに口出しされてたまるか、という態度としか思えません。

原発企業に求められたのは、次のようなことです。

原院第1 号(平成2 3 年7 月2 2 日) 
東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施について(指示)

4.評価実施方法
(1)一次評価

安全上重要な施設・機器等について、設計上の想定を超える事象に対して、どの程度の安全裕度が確保されているか評価する。評価は、許容値等※に対しどの程度の裕度を有するかという観点から行う。また、設計上の想定を超える事象に対し安全性を確保するために取られている措置について、多重防護(defense in depth)の観点から、その効果を示す。これにより、必要な安全水準に一定の安全裕度が上乗せされていることを確認する。

※)(省略)

「どの程度の裕度を有するかという観点から行う」のですよ。「どの程度なのかを明らかにしなさい」、という指示なんです。

そもそも、どうであれば「十分な安全裕度」とか「安全性が確保」といえるのか、何も言っていないじゃないですか。安全・保安院は安全といえる条件を何も言っていません。原発企業はどんな根拠で「安全」というのですか。


こういうところに、安全・保安院と電力会社の力関係が出てますね。


日本原電の二枚舌・政府への報告書と県民へのチラシ

これからが本題です。

上に紹介した日本原電・東海原発に関するチラシの裏ページに、「東海第二発電所のストレステスト(一時評価)の評価結果(詳細)」と題した表があります。

「どの程度の津波高さまで耐えられるかを評価」することに関して、「評価結果」は「15.0mまで耐えられる」とあり、それについて[※3]があり、表の下にその説明があります。


※3:15.0mを超える津波が発生した場合でも、直ちに冷却機能が失われることはありません。


原子炉等の冷却機能が動作できる限界を評価するのがこのテストです。その限界が 15.0m という値だったのです。それを超えても「直ちに冷却機能が失われることはありません。」


何ですか、これは。


前記の日本原電の東海第二発電所に関する報告書では、こんなことは書いていません。(以下、太字は本サイト管理人による)

5.2.3 評価結果
(2) 津波影響評価方法

・・・・15.0m を超える津波については,保守的に炉心損傷に直結するものとして評価した。 (P. 5-2-6)

「保守的に(見れば)炉心損傷に直結する」と安全・保安院に報告しているのではないですか。

「保守的に」というのは「場合によっては」、あるいは、日本原電の"希望的観測によれば"「最悪のケースでは」ということでしょう。しかし、安全性の評価の場合、「最悪のケース」で評価するのは当たり前です。

いまさら「直ちに」という言葉でごまかそうとするのですか。

福島第一原発の事故直後、枝野元官房長官が「ただちに」を連発してひんしゅくを買い、、「ただちに問題ないとは言ったが大丈夫とは言っていない」と言って大恥をかいた事を忘れたのですか。


日本原電はこんな言葉で茨城県の300万県民をだまそうとするのか。

茨城県民もずいぶんなめられたものだ。



[ページの先頭に戻る]